「ふわ…泡風呂…」

ピンク色の泡がぶくぶくと湯面を覆う。
はタオルをして、其処に入り込む。

「ふふ…」

手ですくうとやわらかい花の匂いがする。
キツすぎない、甘すぎない、香り。

と、そのとき風呂場の引き戸がからからとあく。

「あ、骸」
「おや、はいってたんですね
「おいでよー泡風呂!もこもこなの!」

そうですか、と骸は返し、風呂に入る。

「えへへ、今日のは大成功だったな〜」
「?」
「これね、今日の買い物で買ってきたの」
「そうなんですか」
「可愛い雑貨屋さんで、いろいろあったよ。
そうだ、骸にピアス買ってきたからあげる」
「クフフ、有難う御座います
「うん」

ふふ、と笑って足を伸ばすと、
骸の足に私の足があたる。

「あ、ごめん」
「いいですよ」
「…ねぇ骸。しりとりしよう」
「しりとり、ですか?」
「うん、じゃあ「り」からね。
利子」
「し…週末」
「つ…追突…って不吉な」
「クフフ、つま先」
「き、き、キス!」





ちゅ





「ふわぁ!骸くすぐったい」

骸が瞼とおでこにキスを落とす。

「クフフフ、すいません」
「んーん」
「す、ですね、西瓜(すいか)」
「か、かもめ」
「め、めー…メール」
「る?留守」
「す、す、好き」
「はいはーい私もすきでーす。
き、窮屈(きゅうくつ)」
「じゃあ出ますか」
「そうしますか」

ざぱり、と泡をつけたまま湯船から出る。

「頭あらおー」
、洗ってあげますよ」
「うぉーてんきゅう」

冷たい感じがして、頭をしゃかしゃかやられる。

「ふぉー」
「気持ちいいですか、
「うん」

流しますよ、といわれたので、目を軽くつぶる。

「ふわ」
「目、痛くないですか」
「うん、だいじょぶだいじょぶ」

前髪を上げて雫がぽたぽたとたれる。

「よし、じゃあ次は骸の背中を流してあげよう」
「お願いします」

座っている場所を交代。

「…骸白い。女の子なのに負けそう…」
「クフフ、も白いですよ」
「そう?」

泡がするすると背中をすべる。

「親子に見えるかもねー」
「僕はどっちかって言うと恋人がいいんですけどね」
「いいじゃん仲よさげで」

ふふふー、と笑ってお湯を掛けて流す。

「よし」

私はもう一度湯船につかって、骸が頭を洗うのを見る。

「もこもこー」

「ん?」
「…よんだだけです」
「そーですかぁ」

なんとなく骸がかわいくて
笑ってしまう。
手が赤くなっている。
ところどころに泡がついてはじける。

骸がこっちにやってくる。

「むくー」
「なんですかその呼び方」
「ふふふー」

見ると骸もちょっとほっぺたが赤い。
いつもより可愛く見える。

ちょっとぼんやりしてきた。
ゆらゆらする白いもやを見る。

「あったかーい」
「そうですか」
「…私骸を好きになってよかった」
「そうですよ、こんないい男めったにいません」
「わー自分で言ってる」
「ですがみたいな魅力的な女性もなかなかいませんよ」
「わーありがとーはずかしー」
「僕だってちょっと恥ずかしいですよ」

顔を覆った指の間から骸をじっと見る。

「愛してますよ骸」
「I Love Youですよ
「Ti amoですよ骸」
「イタリアですか…」
「ほかになんかあったっけ」

んー、と唸りながら、
私はぼうっとする。

「あ、Je t'aimeですよ
「フランス…何か骸が言うと変な感じ…Seni seviyorumですよ骸」
「何処ですかそれ…」
「トルコ語です」
「んーカナサンドーですよ
「…沖縄?」
「当たりです」
「マイナーでマニアックになってきたー」
「ですね」










「…とりあえず、好き」
「おや、僕もですよ」










泡がはじけて、笑い声が響いた。

Bath Romance