高校の入学式。

130cmという滅茶苦茶大した事無い壇上からコケて、落ちて、打ち所が悪くて足の骨をボッキリと折った
(あの時は、折れた音が自分の中で響いて、痛くて痛くて声も出ないまま気絶した)。

私って、いっつもこう。



さん、おはよー…ってどしたのそのカッコ…

今の私は、頭の上からタオルをかぶっている。
何でかというと

雪下ろしの雪を思いっきりかぶってしまって…ね
「きょ、今日もお疲れ…

クラスメイトの哀れだという目が酷く私を落ち込ませる(でも心配してくれてありがとね)。
  高1。自他共に認める「全くツイてない女

「もう…泣きたいよ」

机に突っ伏そうとした途端、教室の戸が音を立てて開く。

「お、雲雀ハヨーっす」
「うん」

クラスメイトの男子の声が聞こえる。

「あ、さん
今日もご苦労様
「…ケンカ売ってるでしょ、雲雀君
「はい」

無理やり持ち上げられた手のひらに落とされたのはカイロとバンソウコウ。

「?」
「次怪我した時、使いなよ」

いっ、いらない!

そう言ったのに、アイツは笑って自分の席へとついた。

「雲雀はホントさん好きだねぇ」
「…どこが。馬鹿にしてるよあの目!
「…さーん」「おーい…聞いてるー?」

雲雀恭弥は初めっから変な奴

入学してすぐ仲良くなったうちのクラスは全員の携帯番号を交換した。

ー数日後の早朝ー

ピルルルル…

「…ん、はい、もしもし」

眠いのを我慢して無理やり脳を起こして携帯をとった。

「…あ、僕同じクラスの雲雀。
ちょっと声が聞きたくなったから。じゃあね

ブッ

電話はそれだけだったけどそれからというもの毎日のように絡まれる。

「(だから好かれてるっていうか…まとわり付かれてる?
別に告られるわけでもないしなぁ)」

そのときクラスの…あれ、誰だっけ(いけない、忘れた
まぁいいや、クラスの男子が喜んで教室に入り込んできた。

「なぁ!担任オッケーだって!23のイブイブにクラスに講堂貸切
飲み食い踊りオッケーの大はしゃぎパーティー、
担任の許可下りた!

マジですか…
さんは行くよねー」
えっ

私は曖昧な返事をして教室を出た。

「…(今回はやめといたほうが良いよな)」

あのクラスの仲良しっぷりは、ものすごくて私も大好きだ。大好きだけど…

「…さん」
「ごめん今ちょっと考え事してるから」
「うん」

そう誰かの返事が返ってきた途端、

ズダーン!

いっ!

思いっきりコケたあーもう恥ずかしい!)。

「段差あるって…」
早く言ってよ!
「話し掛けちゃいけないのかと思って」
よんでよ、じょ う きょ う !!

ああ、擦り剥いて膝小僧に血がにじむ。

「…大丈夫?」
「(大丈夫じゃないけど)だいじょぶ…」

じっと血が滲むのを見ていたら雲雀君が私の目線に合わせてしゃがみこむ。

さん…てさ。クラスの皆が盛り上がるといつも教室出て行くけど…それにクラスの誰とも仲良くなろうとしないし
何で?
「……雲雀君は気付いてないの?
「?」
入学してから約8ヶ月。私たち1C(1年C組)には災難が多いことを!

そう、いろいろあった!

体育祭、合唱コン、最下位!(あんなに仲良くていざっていう時すごい力を発揮するあのクラスが!)
科学の授業中は謎の事故に音楽ではピアノの弦が切れて家庭科ではレンジ爆発!(それも一回じゃない!)

「…だから?
ぜーーーーーーーーーーーったい私の所為なの!
私のいるクラスは昔っからずっとそう!

…学校行事はしょうがないけどあんな仲良しクラスのクリスマス回までぶち壊しちゃったら、私、私…

ああ、もう惨事が見えるような気がしてきた
すると、雲雀君は突然噴出した(は!?)。

プッ…クク…
「ちょっ」
「そんなワケ…っくく…無いに決まってるじゃない」
「(あるんだってば)」
「…分かった」
「はい?」

二人で幹事やろう

「…いや、話聞いてた?大変な事になるんだってば」
「大丈夫。僕は生まれてから一度も大きな怪我も病気にもなってない。
勉強し忘れたテストも担任の都合で一週間後回し。
くじ運だってすごく良い


そこで雲雀君は綺麗に笑う(もともと美人さんだからね)。

天性の強運持ちなんだよ、僕

んな馬鹿な(自分の事は認めといて人のことは認めないなんて図々しいけど)。

「だから、さんも僕といれば幸せになれる。
…逃げないでよ」
「ちょっ」

その時、また思い切り転んだ(雲雀君は気付いてないけど)。



「わぁちゃんたんこぶが出来てるわー
そんな嬉しそうに言わないでお母さん…
あ、そうだ23日クリスマスパーティー学校でやるから夕飯いい」
「あら、そうなの?」

靴を脱いで、自分の部屋へと向かう。
ベットにぼすんと倒れこんで、ぼうっと思った。

「(雲雀恭弥…あいつやっぱりちょっと変わってる…)」



さん、買出し行こう」
「あ、うん」
「乗せてってあげるから」
乗せ…?

外に出ると、バイクが一台

「…(もしや)」

雲雀君がそれに乗ると、後ろを叩く。

「駄目!絶対事故る!
いやいや
「雲雀君分かってない!私はアンラッキーガールなの!チャリは必ず転ぶし歩けば何かにぶつかる!
さんこそ僕のラッキー人生を分かってないよ。道でお金を拾うし青信号だけで目的地につけるんだよ

いやいやいや。

僕を信じなよ。ね
「…(何だそれ)」

不思議だ。そんなふうに上手く行くワケ無いのに、行けちゃうような気がしないでもないのは

雲雀君が変わり者の所為だろうか

ちょっと中途半端なクリスマスムードになったスーパー(クリスマスだとこじつけてなんでもかんでも売ってそうだ)。

「これでよかったよね、飲み物とケーキ、お菓子と食べ物」
「うん…」
「…どうしたの」
「…雲雀君、私任されたからには一生懸命やるよ、だから私の不幸体質が影響しないように全力で協力&カバーお願い!

私はまくし立てた。

このパーティー成功させればクラスで私の所為で起こっちゃった災難の罪滅ぼしになるんじゃないかなぁと思って!
だから雲雀君も手伝って!



雲雀君はぽかんとした後、くすくすと笑い出しだ(あれ、デジャウ)。

「ふふ…さん可愛いね」
ふぉ!

頬を両手で包み込まれる。

「じゃあはい、僕のご利益付きのピンをあげる」

雲雀君は自分の胸につけていたピンを私の襟近くにつける(もともとじゃらじゃらといろいろ付けないもんな、雲雀君)。

大丈夫。上手く行くから
「……………ん?

良いシーンで悪いが、ぐら、と何かが揺れる感じがした



「…痛い
くく…本当にツイてないねさん」
「そんな笑って言わないで…」

あの後、いろんなお菓子の雨が降ってきた袋のやつやらボトルに入ったやつやら、箱に入ったチョコレートとか)。
いろんな人の好奇の目にさらされつつ私は慌ててそれを棚に仕舞った(後で従業員さんが手伝ってくれたけど雲雀君は口を押さえ笑っていた)。

「ねぇ、さんについて教えて」
「え、そんないきなり…」
「だって皆に何も話さないから何も知らない」
「…分かった。

 、好きなものはガラスとか透き通ったものにスノードームとか何かが閉じ込められてるもの
「ふぅん」
最近はまってる事はガーデニング…ハーブに凝っててでもこの間一鉢枯らして…
ぶっ
「…笑った?
「いや、真剣に話すな、と思って。…真面目な顔して話してくれるのが嬉しくて」
「…(照れるんですが)」
「ねぇ何か歌って特にクリスマスソング」
ええええ(いきなり)」
「歌わなきゃバイクからおろす()」
「わわ、分かった!ぎ・ん・いろーにかーがやーく、まーちにシ・ナ・モンーの香りーとイルミネーション
「何それ」
「Tommy heavenly6のI LOVE XMAS…」

何だこれ。頭おかしくなっちゃったかな(雲雀君と一緒にいるせいか寒さのせいか)(多分前者)。
だって胸がきゅんきゅんするんだもん(お酒って飲むとこんな感じなんだろうか)。



「(明日パーティーだ…上手く行くかも)」
「おはよう」
「うぉ、雲雀どーしたその顔」
「…猫が急に塀から落ちてきた
マジか

「…(まさか)」

私の不幸体質が移った!?
雲雀君の綺麗な顔の片方の頬は腫れて赤くなっている。

違うよ
「…何で言い切れるの!言っとくけど私は人生一度もくじ引きで当たった事無いから
威張る事じゃないと思う
うっ…でも!とりあえず私に近づかずに!幹事は後講堂飾るだけだから私一人でやるよ!」
「…明日、3時に講堂
「だから一人でやるって「知らないよ、遅れないでね

「だーかーらー!来なくていいってば!」
煩いよ、行くから

〜っ!

なんだよ!心配してるのに!何かあったら、

びたーん!

「…コケた(ああ、ツイてない)」

膝が軽く擦り剥けていた。

「ばんそうこ…う…」

”次怪我した時、使いなよ”

私をこんな運命にしてくれちゃったきびしーく尊い神様、
どうか、雲雀君にはせめて何もしないでください…




「おはよー諸君、突然だが今日まだ来てない奴は?実は今日9時のバスが事故起こしてな。時間帯からしてうちの生徒は…」
「…あれ?雲雀は?
「いや、アイツバイク通学だろ?」

「けど今日雪すごいからって…バス使ってたりとかしない…よな

どくり、と私の心臓がなった。

「ま、まさかぁ」

「…違うって!さんの所為じゃないって!」「きっと徒歩で遅れてるんだよ!」

クラスメイトの私を勇気付ける声が聞こえる。
けど、心臓の音が煩いまさか、まさかって)。

私の…所為?



講堂の飾り付けを一人でやるのは虚しい。
いつもは雲雀君がいて、少し話したりするのに

「探しに…(でも私の所為でもっと大惨事になったら…)」

傷が出来てたらどうしよう(まだ、事故にあったって決まったわけじゃないのに
治らないような(私の所為だ

最悪の場合…(嫌だ、恐いよ

”煩いよ、行くから”だから言ったじゃんか
”大きな怪我も病気にもなってない”本当?

天性の強運持ちなんだよ、僕だったら、早く来て

ごめん、待った?さん

透き通る、よく通る低い声が聞こえるああ)。

「ごめんね。バスが横転スリップしちゃって。でも雪かき後のやわらかい雪山に乗っかって負傷者ゼロ。
ほら、天性の強運持ちでしょ……どうしたの?
うぐっ、ひっく

がぼろぼろとこぼれる。

恐かった、死んじゃうと、思って私の所為で)」
「…泣かないでよ」

雲雀君が手を伸ばそうとするけど、それを私は避けた。

「さ、触んないで!
「…ちょっと酷くない?
「きょ、今日は運がたまたま良かったんだよ、
でも、次はわかんないよ!
「…大丈夫だって。また、そんな事言う」
「…雲雀君覚えてない!?入学式の時私この壇上から落ちて!足の骨折っちゃって!

こんな、130cmくらいの高さで骨折しちゃうほどのアンラッキーさで、





私、雲雀君が好きだから不幸にしたくなんか無いよ…





…………………………あれ

ぎゃーす!くくくく口が勝手に!」
「…でもさ、あの時僕は思ったよ

僕が一列目だったら
絶対に抱きとめて
見つめあって

あの子が僕に一目惚れしたらいいのに





つまり僕はあの時恋に落ちちゃったのかもね

「な…(顔赤い!熱い!)」
「というか、一緒にいるだけで結構幸せなのかもね」
「何だ、ソレ」

涙の滲んだ目を閉じて笑えば、涙が落ちそうになる。
ふ、と目を開ければ、顔が…近い

何してるの!?
「え…キス
「やだよこんな講堂のど真ん中で!」
「…はぁ、要は人に見えなければ良いんでしょ?」

壇上のふちの幕に二人で、向こうからみんなの声が聞こえる。
ゆっくりと目を閉じて唇が重なる





成る程、確かに私は雲雀君と一緒にいるだけで幸せだ…





ぶつっ

ん?

ばしゃん!



幕のレールが外れ、幕が下に落ちる。
と、言う事は。

丸見え?

「あー見っけたー」
「なんだお前ら何やってんのー(笑)」
「いやっ、ち、ちが」
「違わなくないでしょ」

冷やかしに改めて照れる(ああもう不幸体質の所為だ!)。

雲雀ーさーん、幹事どうもー!
もりあがろーぜー

雲雀君は悪戯っぽい顔をこちらに向けた。

「ほら、上手く行った。それに僕といて幸せになれたでしょ
「そ、そりゃあそうだけど!人に見られるなんてツイてな…「雲雀ー!チューしろー!
チュー♪

ああ!もう!(恥ずかしくて顔真っ赤だよ!

雲雀君は咄嗟に私の手を引いて、

Kissした
Lucky boy
&
Unlucky girl

(きみとならいつまでもしあわせ!)