?何やってんだあんな所で。



「さぶ…」

寒い。最悪。何故こんな寒い日にわざわざ冷たいアイスを買いに行かなければならんのか。
…まぁ、家族とのじゃんけんに負けた俺が悪いんだけども。

世間一般ではまぁクリスマスイブの一日前という事で、
所々のご近所さんには不釣合いなイルミネーションがされてたり?
カップルが増えたり?
クリスマスとこじつけて何でも売ろうとしたり。
とりあえず、浮かれているといえばいいのだろうか。

「あーマジ凍る…」

今なら冷凍食品の気持ちがわかる。…気もしない。
首を少し動かして、ボーダーのマフラーに擦り寄る。

「あーあ鼻水ずるずる出るし…って」

?何やってんだあんな所で。

公園のあのありきたりな木のベンチ。
そこに、小さな女の子が、ちょこんと座っていた。

今何時だっけ?

「…わー」

8時半だ。そんな時間帯になんでいるんだ?
ていうか今日23日だぞ。普通だったら家族でいろいろ明日の用意とかしてんじゃないのか?(クリスマスだし)

というか。

「あんなところにいて…変な奴でたらどうすんだよ」

コレは…どうすりゃいいんだ?
とりあえず、近くによって話し掛けた。

「…あのー」
「!(ビクッ)」

うわっ。むっちゃ不審そうな目で見られてるよ…。

「…いやいやいや。変な奴じゃないから、そう怯えないで…
お兄さん傷つくんですけど…」
「…ごめんなさい」
「…まぁいいや。どしたの、こんなとこで」
「…」

女の子はぽつり、ぽつりと話し出した。

「今日は…本当はクリスマスパーティーする約束だったの」
「うん」
「24日と25日はね、お母さんとお父さん仕事があるから無理だって。
だから、23日に変えてもらったの」
「うん」
「だけど、今日お仕事はいっちゃったって」
「あー…(成る程ね)」
「でも、知ってるもの…本当は元からクリスマスパーティーやる気なんて無かったって」
「(ん?)」

その子の大きな目に涙がじわりと浮かんで、鼻が少し赤くなる。

「いっつも、お母さん…私の事…ひっく…ふぇ」
「(泣いちゃったー!)」
「…私、なんて、居ても、ぅ、居なくてもっ…ふぇ、同じ、だって」

ぼろぼろと涙を流して、涙をぬぐうその子。

「分かった!とりあえず落ち着け!な!?」
「…ふぇ、っひく」
「(泣き止んでー!俺不審者みたいじゃん!)っほら、アイスあげるからっ!」
「…アイ、ス?」
「(あ)うん、ちょっと寒いけど、いる?」
「………いる」
「(ホッ)」

鼻をぐずぐずと啜りながらも、その子はアイスを受け取って、ちびちびと食べる。
食べ終わったのを受け取って、公園のごみ箱に捨てる。

「といってもなぁ…話しちゃったからには放っておけないし」
「?」
「…よし!とりあえず、俺ん家にこねぇ?」
「!」
「あーといっても、クリスマスパーティーは出来ないけど」
「…いいの?」
「うん…あーでも、」
「…お母さんに電話ならしておく」
「?」

その子は子供用の携帯電話を、持っていたポシェットから取り出した。
今の子供って進んでんだなー。

…電話の内容からして、会話していないとわかった。
きっと留守電かなんかに録音してるんだろう。

「いいって」
「(話してねーじゃん)そうか」
「じゃあ行こう!お家何処?」
「んーここの近く」

手が真っ赤だったので、手を握って、ポケットに突っ込んでやる。

「そういえば、名前聞いてなかったな。名前何?」
「凪!」
「凪かーそうかそうかー」

今時、家に来ない?といわれてひょこひょこと付いてきちゃう子っているんだな。
普通不審者だと思って防犯ベルを鳴らすなりなんなりするだろうし。

「凪さーもしも今度知らない人になんか言われてもついて言っちゃ駄目だよ」
「…」
「いや、俺はいいんだけど」

ぴたっと止まった凪に、焦って声をかけた。
すると、笑って、また歩き出した。

「ねぇ、お名前は?」
「ん〜俺?
?」
「そーそ」

てくてくと、歩きながら、話す。

「わーすごいいっぱい」
「…(イルミネーションの事か?)」
「きらきら!あっ、サンタ!」
「おー」

元気だなーと思いつつ、そのきらきらとしたイルミネーションの隣の家。
そこが俺の家だ。

「ここ?」
「おう」

そう言って、扉を開けた。



中に入ると、暖房を聞かせているのか、
冷たい手がじんわりと溶けていくような感じがした。

「おっそーいーいつま…で…」
「?」

姉貴がどたばたと文句を散らしながらこちらへやってきた。
と、途端に段々声が小さくなっていく。

するとハッとして、リビングのほうに走っていった。

「おかぁさーん!!!!がロリコンの道に―――!!!」
「なっ!?」

違う!断じて違うぞ!

「ろりこん?」
「あー凪は聞かなくて良いから!」

とりあえず、靴脱いでついてきて!といって、
急いでリビングへ向かった。

思い切りリビングの扉を開けて叫ぶ。

「違う!誤解だ!」



「なぁんだ、そうだったの」
「ったく、完璧姉貴の早とちりじゃねぇか」
「へぇ、凪ちゃんって言うの?年はいくつ?」
「えっと、7歳です!」

とりあえず、事情を説明して俺はぐったりとソファに座っていた。
姉貴は呑気に買ってきたアイスを口に入れている(しかも溶けてるじゃない、なんていう文句付きで)。
母さんは、凪に話し掛けていた。

「もう、いきなり君が連れてくるから、ほんとにそっちの道に走っちゃったのかと思って」
「んなわけないでしょーが」
「それにしても勝手につれてきてよかったのかしら?」
「あ、だ、大丈夫です!」

凪が明るく返事すれば、あら、偉いわねーなんていって頭を撫でている。

「…?大丈夫?」

凪がでかい目でこちらを見てくる。

「大丈夫だから」

よしよし、と頭を撫でてやった。



「んじゃあ送ってくるわ」
「はいはーい」

結局仕事から帰ってきた親父も一緒に混ざって、
ゲームやらいろいろやって、疲れて、凪は寝てしまった。
つまり、一晩とまっていったのだ。

今だ起きない凪を背中にしっかりと抱えて、凪の家に送っていく。
住所は昨日聞いたしな(意外と遠い事が判明)。

「ん…」
「おー起きたか」
「あ、あれ?」
「今、送ってってる途中」

寝起きの頭で、混乱しているらしい。

「お、降ろして」
「ん」

しゃがんで、背中から降ろす。

「手、つないでもいい…?」
「おー」

昨日みたいに手をつないで、ポケットに突っ込む。
あ、あったけー。

「(寝起き最強…)」
「ねぇ
「ん?」
「私ね、のお嫁さんになろうと思うの」
「……………はい?」

待て待て待て。凪昨日7歳って言ってたよな?
俺、17歳なんですが。10歳差ですけど。きっつー。

というか何を本気にしてるんだ俺は。
子供の言う事だろ。とりあえず流せば良いのかこれは。

「そうかー」
「うん!」

凪はスキップするように大きくジャンプした。



あれからもう6年?7年?あれ、どっちだっけ。

俺は24になった(あ、7年かつまり)。
あー懐かしい。とりあえず、俺は普通の生活を送っている。

普通のちょっとしたちっさな会社に入った。なかなか部長さんがいい人なんだよな。
ゆとりもあって、給料もなかなか(多いわけではない)。

凪は…あー14かな?

あれ以来会ってないのどうなったのか知らない。
とりあえず、もう中学生か。早いなー。

「あ」

ふと、黒曜中の制服を来た少女とすれ違う。
…パイナップルみたいな髪型してんなぁ。
というか、腹出してて大丈夫なのだろうか。冷えるぞ。

…なんか見た事ある気がする。
その少女が向かう先には、同じ髪形をした少年。

え、髪型までペアルックなカップル?

「って、ちょっ、待って!」

話し掛けようとしてたのにうっかりボーっとしてしまった。
危ない危ない。

「あの!」
「?」

振り返った顔は。

「…凪そっくり(特に、目)」
「え?」
「あ、いや!知人に似てたもので!」

その子は、大きな目をぱちくりとさせて、それから笑い出した。

「え?」
「奇遇ですね。私も貴方と似たような知人を知ってるんですよ」










さんて、言うんです。










「ま
いまょう
私のサンタ


まし
使

(”さん”なんて要らないって!)