そうだ、本を読もう。

そう思ったときには、
体は動き出していた。

空は真っ青な青空。
図書室は空気の入れ替え中だったものの、そう、寒くは無い。


私は、本が好きか嫌いかと問われれば、多分好きなほうだ。


図書室みたいに静かなところは好きだし。
本が綺麗に並べられているのも綺麗。
紙の匂いも、好きだ。

ぱらぱらとめくった本は文庫本。

この前、友達が持ってて、貸してもらって、続きが気になっていたから。
もしかしたら、ここにあるかもなぁ、なんて思って探したら、あったのだ。

なんとなく、この本にはちょびっとだけ運命を感じる。

本を読み終えて、次は何を読もうか、と思いつつ席を立つ。
この本は上下巻だったから、もう読み終えてしまったのだ。

「あれ、それ読むの?」
「?」

あーえっと…

「久藤くん!」
「?」
「だよね?」
「うん」

わー本当に顔整ってるよ…
女子が騒ぐのもわかるなぁ。…私も女子だけど。

「それで?」
「あー…っとこれはもう読み終えたの」
「そうなんだ、だったらコレがオススメかな」

はい、と文庫本を渡される。

「…あ、ありがとう」
「どういたしまして。…さんだよね?」
「あれ、知ってるんだ?」
「うん」

それからちょっと話して、意外に本の趣味があうことに気づいた。

それからすすめてもらった本を読んで、
さよならした。

「じゃあ、また今度も面白い本、教えてね」
「うん、じゃあね、さん」

なかなか、話のしかたもよろしくって面白かったな。
うん、あれはモテるな。

+++++

今日もいつも通りおすすめの本を教えてもらおうと思ってきたのだけれど。

先ほどからずっと
本の山の中を、ゆっくりと歩いていた。

「…いないなぁ」

久藤君が居ない。
もういるかと思ってたのに。

仕方ないので、本を一冊もって、
黙々と読み出した。

「…」

私一人しか居ない大きな空間は、
成る程、とても虚しかった。

そう考えると、意外と久藤くんとは話が弾んでたんだなぁ、と思う。

ぱらぱらとページのめくれる音がするけれど、
…これ、私の好みの本じゃないや。

久藤君が進めてくれる本は私のタイプばっかだった。
結構久藤君も読んでるらしいけど。

本を変えてくるのも面倒なので、流し見程度に見ていた。

+++++

ん…あったかい…
ふわふわと、ああ、お酒飲んで酔ったときってこんな感じかな、と
頭のどっかで思ってたとき。





がくっ





「!?」

はっと夢見ごごちだった瞼を開く。
ああ、いけない、寝てしまった。

頬杖をついていたため、今のは、顔が手から落ちた感覚だとわかった。
頬杖ついていた腕が、少し痛い。
ついでに、首も。

「ふぁ…」

一つ欠伸が口から出る。

冬だから寒いのだけれど、
結構暖かいな。

「……ん?」

肩に、何かの重み。

「?」

肩を見てみると、黒い布。
…学ランだ。

「え、誰の?」

どっかの優しい人でもかけてくれたんだろうか。
お人よしだなぁ。
そう思いながらも肩から学ランをおろした。

ふと、外を見れば、もう真っ赤だった。
差し込む光でオレンジが床に広がっている。

そのとき。

「あ、さん、起きた?」
「!(ビクッ)」

思い切り心臓が飛び跳ねた(驚いて)。
後ろを振り向けば、少しオレンジに染まった

「く、久藤くん…」
「ごめん遅くなっちゃって」
「…!!」

ああ!そうだった!久藤君待ってたんだった…
当初の目的忘れてぐーすか寝ちゃってたよ…

「いや、いいよ。ごめんね寝ちゃってて。
起こしてくれれば、良かったんだけど」
「いや、幸せそうな顔で寝てるから」
「寝顔、見た?」
「…ごめんね」

…。照れる。といっても私はそんなにそう言うの気にしないんだけど。

「あ、これ久藤君の?」
「ああ、うん」
「これ、じゃあ、有難う」
「いいよ」

久藤君が笑う。やっぱり顔整ってる人が笑うと、
威力が違うなぁ。

「ねぇさん」
「?何?」
「この前、なんでさんの名前を知ってるか疑問に思ってたでしょ?」
「…ああ」

”あれ、知ってるんだ?”

「何でか教えてあげようか」
「?」










「ずっと見てたんだよ、さんのこと」










ミス・キティ
(これは、あっちのほうの意味にとっていいんでしょうか?)