ねぇツナ、海へ行こうよ。
海?、海生きたいの?
うん。海を見たら、私の家で、お昼ご飯を食べよう。
…うん。
最後は…





*****





「わぁ…海…」
「寒いね…」





冬の海。

冷たい風が吹き付けて。
少しだけ邪魔な前髪を避ける。

夏は、此処に遊びに来たなぁ。

夏とは違う、海の顔にどこか、少し寂しいような、懐かしいような気持ちになった。

ふと、ツナが隣に来る。
私と同じ方向を見ている。





「…ツナ?」
「寒いから」





ツナの顔は寒くなさそうな位赤い。
何故なら、私の手と、ツナの手は繋がれているから。

そして、その繋がれた手は、ツナのポケットに突っ込まれている。

付き合っているのを、内緒にしているわけではないけれど、
どこか、二人だけの秘密のようだった。

だーれも知らないうちに、大きくなって、育っていく。

きっと何年経っても変わらない。





「…いい匂い」
「…潮の匂いでしょ?」
「海の匂いだよ」





ロマン無いなぁ、と少し笑う。
BGMは、波の音。

お荷物とかじゃなくて、
この、ツナの少しかさかさしててどこか柔らかい手を、暖めてあげたい。

ずっと傍にいたい。ううん、傍に居るの。

そう、思って海を眺めた。

*****





「うん、美味しいよ
「そう?奈々さんには負けるけどね」





私の家。

特に女の子らしく縫いぐるみとか置いてない。
でも、多少可愛くしてある。

マットが虹色だったとかね。

今はお昼。

だから、一緒に私の作ったご飯を食べている。
頑張って作ったつもり。





「…ごちそうさま!」





そう言って、笑顔で手を合わせてくれる。
優しいな。ちょっと照れそうだったので、

照れ隠しに笑った。

お皿を片付けて、
家の鍵を閉める。

また、手をつないで、ポッケに入れてもらう。

じっと横を見ると、目が合って、
その後前を向いて、
照れたように笑う。

負担とかじゃなくて、
これからは新しく二人で歩いて、
一緒に素敵になりたい。

ずっと一緒、なんて誓いの言葉みたいだけれど。

きっと、なれると信じてるから。

*****

がたんごとんと、電車が揺れる。





最後は…
電車の終点まで。





お客さんのいない車内は、
私たち二人だけだった。

電車に乗っても、変わらないのは、ポケットに入れたこの手だけ。

きゅう、と握り返して、
不思議そうな顔をしたツナに笑い返す。





「…ツナ」
「何?
「…雪」
「え?」





ふと照れ隠しに後ろを向いたら、雪がはらはらと降っていた。





「わー。積もるかな?」
「かもね」





ねぇ、ツナ。
何?
もしも雪が降ったら、またこうやって、
…手ならいくらでもつないであげるよ。
…うん。





君への好きは世界中の誰よりも負けないよ。
ポッケの中、握った手は、いつも一緒に居られる事を示しているようで。

ずっと、君の一番近くに居るよ。





二人でつないだ手は、ずっと温度を持ったまま。
終点へと向かう間。
私たち暫く、寝る事にした。










起きても、きっと君の手は私の手と一緒だから。










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