「よし、んじゃあ隊長!スタンドアップです!」
「…うるさいでさぁ」

ボカッ

いったー!殴る事無いじゃないですか!自業自得ですよ!」
「…ハッ!
「…(子供…だっけそういえば)」



「ロシアンルーレット?」
「そうでさぁ」

こんにちは。です。
只今、真選組の書類を処理していた…んですが。

悪夢がやってくる〜と言うBGMと共に悪魔がやってきました。
ええ、ええ、見た目は天使と言っても過言ではないんですけどね。

「それで、負けた方は言う事を聞く。どうですかィ」
「えーでもたいちょーまだ私書類が残ってr」

チャキ

「はい?」
「…やります

…刀を突きつけられた。
本当にこの人隊長?チクショー年下なのになんでこんなにヘコヘコしなきゃいけないんだ。
大体私はまだ書類が残ってるんだってば!

「それで、ルールは?早いトコ終わらせたいです」
「実はですねぃ、ここに二つドラ焼きがあるんですけども、
どっちかがものすごく沢山わさびが入ってるんでィ」
「はぁ(ベタ…)」
「というわけでどっちがはずれでしょうゲーム」
「ていうかソレ隊長が思いっきし有利ですよね?
「まぁ、いいんでさァ、じゃあ先攻後攻じゃーんけーん
はっ!?

「「ぽい!」」

「…私の馬鹿」
「…勝負ありですねィ(にやり)」

遊ばれているが、此処で反抗すると、めんどくさい事になりかねないので、おさえる。

「じゃあオレはこっちで」
「んじゃあ必然的に私はこちらですね(負けた…)」

せーの、で口にぱくり。










甘い。

ぐっ

ふと、声をしたほうを見ると、口を押さえている隊長。
そして、私の部屋を転がるように飛び出していった。
例えわさび好きでも、きっとあんこと混ざったわさびはまずいと思う。多分。
!!やった!幸運の女神様は、いつも苦労(副長とめたり、近藤さんの治療したり、
山崎さんの代わりに隊長に追いかけられたり)している私に、
ご褒美をくれたのだ。

今なら昇天できそうだ。笑点じゃないぞ、昇天だ。
ああ、でもまず隊長に罰ゲーム与えてから昇天しなくては!

…でもあの様子だと、とんずらこいたかもしれない。
まぁいいや。暫くは帰ってこないはずだから、
ゆっくりと、書類の処理が出来るのだから。



「…あれ、隊長戻ってきちゃったんですか」

「別に逃げても良かったのに」
「…うるせェ
「んじゃあ罰ゲームですね、ちょっと待ってください」

私は部屋に隊長を残し、山崎さんの部屋へと向かった。
無礼?そんなのここでは今更、ですよ。



「山崎さーん」
「あ、さん、どうしました?」
「いえ…ちょっと、










女装の道具を貸してほしいなぁ…と思って」
は?
「いや、実はですね」

所々省略しながら話すと、ああ、と言って山崎さんは快く着物とかを貸してくれた。
ちょっと顔が爽やかだったのは、気のせいではないと思う。

私は廊下を歩きながら、ぼうっと隊長を思い浮かべた。
そこから脳内でいろいろ修正をして…





あ、可愛い。





元々顔が若いんだ、だから似合うよな。
それに美少年の域に入るし。
そりゃそっか。

「待ちましたー?隊長」

隊長は、ふん、とでも言うように顔を逸らす。
まぁいいけど。

「んじゃあ、罰ゲームー、ということでたーいちょーこれ着てくださーい」

あくまで軽いタッチでいく。
隊長は私から貰ったものを見ると、うげ、と顔をゆがめると
「出て行ってくだせぇ」と言う。ものすっごく歪めてたなぁ、顔。



「入りますよー」

ふすまを開けると、そこには隊長…基、そーちゃん?(あれ、これじゃあ今は亡きあの美人な
隊長のお姉さんみたいだ)がいた。


「綺麗ですね隊長」
「…嬉しくないでさぁ
そりゃあそうですね

こうして、冒頭に戻る。

「よし、んじゃあ隊長!スタンドアップです!」
「…うるさいでさぁ」

ボカッ

いったー!殴る事無いじゃないですか!自業自得ですよ!」
「…ハッ!
「…(子供…だっけそういえば)」

とりあえず隊長はしぶしぶ立った。
ミニじゃなくて良かったじゃないですか、とでも言おうと思ったが、
それじゃあ火に油かな、と思い、何も言わなかった。

「よし、じゃあ次化粧」
は!?
「…はいいか、肌が悪くなりますし、そのままで十分ですから」

…なんでそこで頬染めるんですか隊長。
ちょ、この青臭い雰囲気どうにかしてくださいよ。

「…隊長」
「…なんでさァ」
「似合ってますよ」
「…そうですかィ。全然嬉しくねーや」

ふてくされたように、(いや、ふてくされたのか)隊長は畳に座り込む。

しょうがないので、私も畳に座り込む。
じっと見つめれば、見つめるほど可愛い。
やっぱりどこか違和感があるものの、きっとチラッと見たくらいなら女にしか見えない。

「…何見てんでさァ」
「…いえ、気にしないでください。煎餅、食べます?」
「…食べる

あ、可愛い。これが巷で噂の「つんでれ」と「萌え」か。
アレだよね、べっ、べつにあんたのためじゃないから!みたいな(いや、私はそっちの人じゃ
ないけど)。


淡い色の着物のおかげで、色素の薄い髪に違和感が無い。
ていうか、山崎さんこんなの持ってるんだ。

「隊長、外歩きませんか」


ガシャン

「…嘘です

だから、バズーカを構えるのはやめて。
ほんと、冗談になりませんから。


「んじゃあ、後10分だけその姿でいてください」

別に、苛めたいとかそういうのじゃなくて、純粋にきれいだなぁ、と思ったので。

「…」
「…」

…何か喋れ
「あ、今日初めて名前呼びましたね隊長
「…総悟でいい」
はい?
「っだから!も隊長じゃなくて総悟で良いっていってんでさァ!
「…嫌ですよ。私以外と上下関係とか気にするんですよ。
さん付けで良いですか
「…もうそれでいいでさァ

隊長…基総悟さん(変な感じ)が呆れたようにそう言う。

私はそれをじっと見て、隊長の頬に手を伸ばす。
柔らかーい。ずるいなぁこれは。

「…何でさァ」
気にしないでください

「…」

じぃっと見つめたまま、顔を近づける。
柄になく、総悟…さんは焦っていた。

目をきょろきょろと動かし、しかし結局、私の目線とかち合う。

総悟さんの息が顔に少しかかる。
それくらい、近い。




総悟さんが、少し詰まるように、私の名前を呼んだときだった。





さん、さっきの女装道具返して…ほし…い





襖を開けた山崎さんにばっちり見られた。あーあ。
傍から見れば、「総悟さんを追い詰めて襲おうとしている女」の図だろう。

「す、すいませんでした!」

勢い良く、山崎さんは襖を閉め、走っていった。





「「」」





再び二人だけになってしまった私たちは、顔を見合わせると、
そのまま五秒間くらい黙っていたが、
すぐに総悟さんが立ち上がった。

「総悟さ」
「…アイツ片付けてきまさァ
「…」

今逆らったら、やばいかな、と思い、私は黙っていた。
本当は、女装のままですけど、と言おうとしたのだけれど。





ただ、あの時微かに染まった赤い耳は、しっかりと脳内に焼きついた。

まだ、
  天には逝けない

(神様、前言撤回がききましたら、私の言葉を取り消してください)
罰ゲーム与えてから昇天ではなく、)
(たいちょ…総悟さんが私の目の前から消えるまでにしてください)