恭!
「…

大きなツリーの下、待ち合わせていた人が来た私は、相手が気付いたのを確認すると、大きく手を振った



いとこの雲雀恭弥には中々会えない
違う所で暮らしてるからね。でも、今日は久しぶりに会えた。

私は恭のいとこであり、幼馴染だ
私も昔は並盛に住んでいたけど、お父さんの都合で引っ越してしまった。

いつも泣かない恭が目に涙をためて、「、行かないで」と言っていたことを覚えている。

まあ、少し引越しの荷物整理とか終わった後は夏休みとかにちょくちょくきてたんだけど。
今年は忙しくて、最後に会ったのは5月5日の恭の誕生日だけだろうか。
それまでは手紙とか送ってたんだけど。

私の住んでいる所は、もう都会!って感じで、クリスマスともなると、町は一気にクリスマスモードになる。

白い息を吐いて、隣に居る恭をみる。恭は私と同じように白い息を吐いて、青いマフラーに口を埋めていた。
耳と、鼻のてっぺんが赤くなっている。ふふ、と笑うと何笑ってるの、と言われた。

「何処行こう?」
「そうだね」

今日は一緒に互いのプレゼントを買いたいとこじつけて、会ったのだから、なにか買わなくては。

、それ」
「ん?」
「その、」

恭が足を指差す。足がどうした?
…ああ、このブーツか

「へへー、サンタみたいでしょ」
「うん」

「…
いや、同意するとは思わなくて

真っ赤なブーツ。この前お店で見つけて、いいな、と思って買った。

イルミネーションの中、人ごみを掻き分け走っていく人を見た。
転ぶぞー、と思っていたが転ばず、その人は肩で息をして、
女の人…待ち合わせていた人だろうか。その人に笑っていた。

よく見れば、周りに居る人たちの顔も、大体笑顔だ。
ハッピーなムードが漂っている

お母さんとお父さんにこれでもかと粘った今日のお小遣いに、私は頬を緩める。
ポシェットの中に入ったお財布に笑いかけた

「あ、あそこいい」
「何処?」
「あそこ」

指差したお店へ走っていく。

ショーウインドウに手を当てると、ガラスが曇ったが、気にしない。
スプレーか何かで曇り文字が書いてあった。「Holy Night」か…
床にはお洒落に銀色の布が敷いてあって、所々四角形の立体が出っ張っている。
その上に、テディベアや、赤いリボン、花束、ハイヒールの靴が置いてあった。

「ふわー」

とんとん

「?」

肩を指で叩かれたので、横を見ると真っ赤なサンタのおじさん(店長さんかな?)。
両手を持ち上げられて、そのままにしていると、サンタのおじさんが手を一振り。
するとその手の中には青色の薔薇が。造花かな?

わぁ!

サンタのおじさんは笑いながら私に薔薇をくれた。
うっとりしてみていると、

何してるの

と恭に言われた。

「見て見て!貰った!」
「誰に?」
「サンタのおじさんに!」

先ほどのおじさんを指差すと「ああ」と恭は頷いた。

「あっ、ちょっと恭ストップ!
「何?」
「よ…っと」

恭の着ている黒い服の胸ポケットに薔薇を差し込む。
青色がマフラーと合っていた。

「ふっふーお洒落!」
「…」

恭は外さずに少し黙ると、「買い物するんでしょ」と言って、店内に手を引かれながら入った。



「…リング高!
「そりゃそうでしょ」
「…この際クマさんでもいいですか恭
「…却下だよ

ちえー。恭意外と似合うよきっと。
そんなワケ無いでしょ…。


店内はお洒落なクリスマスソングがかかっている。
というか、カップル率高いな…

「…私もうちょっと後からにしよー」
「…そう」
「じゃあ次恭ね!」
行き成りそんなこと言われてもこの町のことあんまり知らないんだけど…

恭はずかずかと店を出て行く。ちょっと待て、私と恭じゃ全然足のコンパス違うんすけど…!!

「あ」
「ん?何処?」
「あそこ」

?何処だ。人ごみでみえねぇ!
そう考えている間にも、恭はずかずかと歩いていく。

「ってちょっと待て、ここ普通の家じゃん

白い扉の洋風な家。
クリスマスパーティーでもやってそうだ。

「店だって」

恭が指差す先には、「Xmas Shop」とかかれた看板。

「あ…」
「ほらね。何間抜け面してるの、行くよ」

白い扉を開けると、大きなツリーがドドンと置いてある。
周りにはクリスマス風の置物。ガラスの棚には、沢山のスノードーム。

店の中は少し薄暗くて、いろいろな形をしたライトが店内を照らしていた。
お客さんは、片手で数えるくらい。
そりゃそうだ、普通の家みたいだもん。

「わ、このオーナメント可愛い」
「どれ?」

星の形をした、小さなオーナメント。ツリーに引っ掛けてある。
恭の方を見ると、キャンドルを見ていた。

「このケーキ型の可愛い」
食い意地が張ってるね、
いやそう言う意味じゃないし!
「…」
「シカトっすか…」

慎重に吟味しているらしい恭を横目で見ながら、私はスノードームの置いてある棚のところへ行った。
この店、意外と雰囲気がいい。この店で買おうかな。

足元には、スノーマンのライトが点いていた。
後、棚の隣には、サンタの持っている袋から色とりどりのリボンが飛び出しているものがある。
きっとこのリボンが売り物なんだろう。

「あ、このスノードーム可愛い」

砂時計型になっていて、下にはステンドグラスで出来た黒猫が、上には
赤い蝶々が飛んでいる

台も中々凝っている。真っ白なのだ。黒猫と対照的で綺麗だ。

私は値段を見た。

「い…一万五千九百円…

い、一万って所から無理だ…

「恭のプレゼントにしようと思ったけど…やめよう」

私はその棚から目をはずした。



「うーん…どうしよう」

結局さっきの所に戻ってきた。
つまり、スノードームのところ。

「(欲しい…でもギリギリ足りない…)」

ずっとそれを見つめていた。

?どうしたの?
「わっ」

店員のお姉さんが、首を傾げてこちらを見ていた。
お姉さんは茶色い髪を一つに縛って、星のオーナメントをつけていた。
エプロンは赤だ。

「ああ、このスノードーム?」
「え、あ、はい…でも高くって」
「ふふ、そうね」

お姉さんはこの店の店長さんらしい。

「ここはね、私の集めてたものを売ってるの」
「へ、へぇ」
「だから、そうねぇ…欲しいならあげるわ
え!?
「ただし、交換条件!

へ?
おっと、ついつい間抜けな顔をしてしまった。

「あ、あの?」
「貴方のその、ブレスレッド。ちょうだい?

「それでこのお店でそれを売るから」

ええええ。これは…駄目だよ。
高校に入ってバイトして、初めて買ったものだ
結構高いし。といっても、3000だが…
銀色に赤い石のついたブレスレッドだ

「それならクリスマスカラーだし…」
「…」
「貴方はいくら持ってるの?」
「い、一万…」
「そう、じゃあそのブレスレッドと一万円、くれたら売ってあげてもいいかしら」

…どうしよう、お買い得にはお買い得だけれど…
私が汗水(といってもそこまで激しくない)たらして買ったものなのだ。

「…どうする?」
「…う」

恭の顔だけが浮かぶ。
焦ったときの恭頼み、なんて。どうしよう。





私は拳を握り締めた










「…買います!







「よっし!交換!」
「…張り切ってるね」

はい。結局買いました。
お姉さんがにこやかに笑いながら、黒い小さなクリスマスツリーに私のブレスレッドをかけた。
お姉さん、貴方がどんなに綺麗でもあの時ばっかりは悪魔の笑みに見えたよ…

今、私たちは待ち合わせ場所だったツリーの下にいる。

「じゃあ」
「ちょっと待って」
「?」

プレゼントを出そうとすると、恭が手を出してストップをかける。
どした?

「……
「えっ、うそ!?

上を見上げると、はらはらと雪が降ってきた。
周りの人も、雪が降ってきたことに驚いている。

「わーいホワイトクリスマス!
「…声大きい

唇や睫に雪がかかって、溶けていく。

「というか改めまして!ハッピークリスマス!

私は赤い包装紙に緑リボンが結ばれた箱を出した。

「……何これ?」
「ふっふーあけてみんしゃい!絶対落とすなよ!
「…割れ物か

恭がそう呟きながらリボンを解く。
私が渡されたわけでもないのに、
どきどきと鼓動が高鳴る






「…スノードーム?」
「…そう」
「…へぇ。















にしてはいい趣味だね」


私は嬉しくなって、顔をくしゃっと歪めて、半ば泣きかけながら
恭に抱きついた

あ、ちゃんと恭はスノードームを落とさなかった。

周りの視線が痛いが気にするものか。

「ちょっ…!!……何泣いてるの?
「っこれで返すとかいばれでたらもっと泣いでるもん!
は?

私は泣きながらこれを買った経緯を話した。

「…そういうこと」
「…うん」
馬鹿だね
「うっ…なにおう!?」















恭、が私の体を抱きしめた。















きょきょきょきょ恭!?
変な笑い声だね
笑いじゃねぇ!

ばっくんばっくんと心臓が煩い。
顔あつっ!

「…本当、僕はの事好きみたいだ」
は!?
「だから…好きだって言ってるでしょ
さらっと言わんといてぇ!

私は泣きながら、むちゃくちゃに抱き返した。

が…僕のためにしてくれたのが嬉しいんだよ」
「…恭熱でもある?
咬み殺すよ
「すいませんいつも通りですね!

ぎゅう、と恭は私を抱きしめる。
ひぃ!皆見てるから!

一度体を離して、恭はポケットから紙袋を出す。

「はい」
「あ」

なんとも飾りっ気の無い紙袋。
それを開けると、銀色が見えた。





「これっ…!!!」





私が売って、お姉さんが黒くてちっちゃいツリーにかけたもの。





私の…!!





「…ワォ、運命だね」
はい!?
「という事で、」





恭は、私をもう一度抱きしめる。





「ほら、僕らって縁があると思わない?


(どうしよう、運命とか信じそうだ)(だって、私たちのために、この舞台は用意されてたみたいで