とりあえず急がないと!殺される!それだけはカンベン!
「、なんか飲みモン買ってこい」
「は?」
携帯で呼び出されて、
真撰組の屯所で総悟に言われた言葉はそれだった。
「なっ、携帯で呼び出しといてそれだけの用事で!?」
チャキ
「なんでぃ、なんか文句でもあるんですかィ」
「…無いです」
チクショー!
一般人に警察が刀使ってんじゃねーよ!
「じゃあ行ってこい!」
「あたしは犬!?」
そう言いながらも私は走り出した。
短い裾の着物は、走りやすい。
人の多い町で、走ると言うのは迷惑だけれども、
もう慣れてしまった。
上手くするりするりとかわして、
目的の赤い箱へと走る。
あーあ、アタシもブーツはこうかなぁ。
道行く人は、皆おしゃれだ。
あたしだっておしゃれなのに、走っているせいでぐしゃぐしゃだ。
まったく、総悟のせいだ。
でもそんなこと言ったら黒い笑みで
「なんですってぃ?」
と刀を突きつけられる事であろう。
まったく、曲者だよあいつは!
*
てか、走りながら思考回路を巡ってて
思ったんだけど。
アタシは何でそもそも年下のあいつにぺこぺこしてるんだ?(といっても一歳違いだけど)
あたしと総悟の関係。
総悟とは、幼馴染。
ご近所さんだったから、遊んでた。
いつも綺麗なお姉さんが、「ちゃん、総悟、よろしくね」ってあたしに言っていた。
総悟も顔だけは綺麗だもんなァ。
「ちくしょー!!!わ、若くないせいか、息、切れる!」
いや、若いんだけどさ。
普段そんなハードな事をしているわけでもない私の体は、
とりあえず煩い位に心臓が早まる。
角を曲がって、見えた自販機。
あった!
「って全部売り切れ!?」
ありえない!
あ…そういえば、昔こんな事があった。
*
「総悟!」
「なんでィ」
「あんたホント大魔王だな!」
「は?」
その時、アタシは今のように使いっパシリにされてて、
駄菓子屋にお菓子を買いに行っていた。が、
「駄菓子屋!もうお店閉店してたわよ!」
「…」
「その次の駄菓子屋さんは、用事で居なかったしその次は事故があって入れなかったし!
あんた知ってたんでしょ!」
「…しらねぇですぜ」
「…マジでか」
「マジ」
*
とまぁ、なぜかパシリにされるときだけ不幸が重なるのである。オーノー。
それから、やっぱりあたしは昔からパシリだった。
というより、犬とご主人様だ。(アタシが犬か…嫌な表現だ)
「取って来い」と言われて「取ってきます!」と言う主従関係になっている。
「ハァ…ハ…ッ」
く、苦しい。
やっと見つけた自販機。
ちゃあんと、残ってる。
お金を入れて、ボタンを押せば、ゴトンと音がする。
さて、早く帰らなければ。
*
「ハァ…ッ、ッ」
声にならないくらいに走って、
あの憎たらしいやつの元へと向かう。
「そぉごー!!!!!」
「!」
顔が真っ赤になって、頭くらくらする。
「なんでィもうかってきたのか」
「このサディスティックヤロー!」
どんだけはしらす気だ!
「ハァ」
とりあえず座る。苦しい。腹筋が…。
「えい」
「ぎゃあああああ腹おすな!」
「なんでぃ凹ませてやろうと思ったのに」
別の意味でへこんできた。
髪が顔に張り付いてうざったい。
あつい。なんでこんなに着物って暑いんだろう。
アタシは気をまぎわらわすために、総悟に話し掛ける。
「なんであたしたちって幼馴染なのに、アタシの方が権力とか下っぽいんだろ」
「がそういう属性なんでさァ」
「嫌な属性だな!」
総悟はそれに、と続ける。
「ただの幼馴染じゃないですぜ」
「は?」
「俺にとっては」
何だソレ。
「俺にとってはは恋愛として好きなヤツですぜぃ」
「は…」
「兼パシリ」
「今のでぶち壊しだよ!」
ちくしょう、ドキドキしちゃった。
スピードに
加わる優しさ
(ちくしょう!アタシだって好きだもんね!)