「有り得ない」
「…んな事無いってば」
「噂とは元々大した事ではない、
事件等に余計な事を付けて面白くさせた物であって
決して真偽の程は確か「あーもうわかったから!」
「人の言葉を遮(さえぎ)るとは失礼にも程が有る、花」
「アンタのその辞書を引いたみたいな喋り方イヤなのよ…」
「…」

そこまで私は確(しっか)りした喋り方をしていたのだろうか。
…否(いや)、そんな事は無い。

「沢田綱吉が私に惚れている?沢田綱吉が好きなのは京子であり、
周囲も承知の筈(はず)」
「…ハァ」
「何故?」

私は次の授業に向け、教科書を開く。

「…ねぇ、何とも思わないの?」
「一時の感情に振り回される位なら
自分からはっきりと発言したら良い、
それにそんなものに構っている暇等無い」
「(あちゃー…)」

本能の侭動くのは勝手だが
周囲の人間や特に私に迷惑さえ掛けなければ良い。

「沢田も大変ね…」
「何故?」
「(アンタのその性格よ…)」



「…沢田綱吉」
「あ、あ、さん」
「何を?」
「あ…えっ、えっと、今、プリント落としちゃって」
「…」
「え、え?」
「何でも無い。…手伝う」
「あ、ありがとう」

白い紙もきっちりと字が並んでいると綺麗だな。

「…あ、あのさ」
「…何だ?」
、さんてさ、あの、そのす、」
「…」

もっと滑らかに発言できないのか。

「好きな人、とかいる?」
「好きな人、と言うのはどの様にだ。
利益があり、好きなのか、
それとも、本能の侭に好きなのか」
「えっと、後者…?」
「なら、父、花、京子、」
「お、お母さんは?好きじゃないの?」
「普通」
「(普通ー!)」

人として基本的に優しいが趣味が合わない。

「あの、じゃあさ、こう恋愛的には…?」
「恋愛だって本能の様な物だろう。
だが、一般に言う「恋」と思える物は恐らく無い」
「へ、へー」

如何しても、其れが分からない。

「恋…とは何だ」
「えっ」

其処まで驚く事は無いだろう。

「そ、そうだな」
「…」
「こう、笑顔を見るとドキドキする感じ?」
「大まかな説明だな」
「う…」
「もっと、分かり易く言えないのか?」
「え、えっとじゃあ」





「オレ、が今、さんに対しておこってる、異常現象??」





嗚呼、何故か今なら分かる。

恋と言ふ物
(胸が高鳴り、上手く発言できず、顔に熱が集まるのだな)