「おはよう御座います」
彼はそう言ってクス、と笑った。
*
ゆさゆさと揺す振られる感覚がして、黒髪の彼―雲雀恭弥―はもそもそと
包まったシーツから顔を出した。
重たい瞼を緩々と開ければ、自分と同じ髪の色が目に入る。
「…」
上手く回らない舌でそう言うと、彼はニコリ、と笑った。
そして冒頭に戻る。
「おはよう御座います」
*
雲雀は目を擦ると欠伸をする。
窓から白いような、黄色いような光が差し込んでいた。
「…ん」
少し身体を伸ばすと
「おはよ」
雲雀はそう言った。
しかしまだ眠そうである。
雲雀は寝ぼけ眼での方をゆっくりと向いて、
の首に向って手を伸ばした。
そしてに抱きつく。
「…寝てはいけませんよ?」
は苦笑する。
「分かってる…」
の首元で頭を動かす。
髪が当たって、くすぐったい。
少しすると雲雀は緩々と離れ、
ベットから起き上がった。
*
ゆっくりとシャツを羽織る。
一応は部屋には居ない。
自分がそう言ったのだ。
着替え終わると、重そうなドアをゆっくりと開けた。
今日も一日が始まる。
*
そしてその夜。
「ふぁ…」
「もうお眠りになられた方がいいのでは?」
が少し笑いながら言う。
「うん」
大きな椅子から雲雀は立ち上がる。
そしてのほうへ向かうと少し背伸びをして
頬に唇を押し当てる。
「お、おやすみっ」
雲雀はパッと離れ、少し駆け足で寝室へと行った。
雲雀の顔は真っ赤だった。
残されたは、ほんの少しだけ笑った。
「お休みなさいませ恭弥様…」
愛が呼ぶほうへ
(言えないんだ苦しくて、執事の君が好きだって事)(臆病なんだよ、僕は)