京子は止まっていた。
指のネイルを乾かすために。
色はベビーピンク。
*
コン、とノックする音がする。
「はーい」
視線は手のまま返事をする。
「失礼します」
「あ、」
この彼は執事だったりする。
「どうかされたのですか?」
こちらに視線が来ない事を不思議に思い、
京子の近くで喋る。
すると(悪気は無いのだが)
低い声が耳にかかる。
「ひゃ!」
「!」
…しまった。
ついつい手を握り締めてしまった。
*
「そういうことですか」
「うぅ…」
は苦笑して京子のメイクボックスをもつ。
「塗りなおしてあげます」
*
ドキドキする。
このドキドキが彼に伝わらないようにと思う。
でも分かっちゃってる気がする。
どうしよう。
頭の中だけ、勝手に進んでいく。
いろいろ考えて。
京子の頬がぽっと
爪に塗ったベイビーピンクと同じ色になった。
彼は笑い、顔をあげる。
「塗り終わりましたよ」
オトメモリアル
(恥ずかしかった!)(でも名残惜しいや…)