……ッ!(きゅん)





頬を染める自分の上司に、犬と千種はこっそりと溜息をついたのだった。

Lovesickness

骸の目線の先には、小さな女子。
艶々とした髪は、ばっさりと切られている。

外を見る目は、楽しげで、頬づえをつく指はリズムをとっていた。

「(ああ、なんて格好良いんでしょうか……!
あの日僕を助けてくれたとき!





〜あの日 回想(脚色有)〜

「チッ、なんで僕に仕事を頼むんですかね、あのクソ教師共が……!」
「あれ、六道じゃないか」

僕は振り向いた。
そこにはクラスメイトのさん。
もうこの時から運命は……ああっ!これ以上は!

さんは、僕に手を差し出す。
僕はそれを不審げに見た。

「重そうだね、持つよ」
「え、いいですよ……(どきどき)」

何どきどきしてるんだ僕!しっかりしなさい!





そんな気持ちは、に砕かれた。





「いや、そんな細っこい腕じゃ重いんじゃないか。
なんなら、私が変わってやっても良い。あの二人が待ってたぞ」
「貴方も細いでしょう……?(どくどくどくどく)」

顔が熱い。





私なら。柔道で鍛えているし





ほら、と彼女はもう一度腕を出した。





その瞬間……僕の周りに花が散った……!

〜回想終わり〜





僕はあのときから君が好きなんですよ!花嫁修業はもちろんのこと、
君が背中を預けてくれるようにスキル無しでもいいように鍛えました!











だから、僕の事を見てください!)」

犬と千種は、身悶える自分の上司を白い目で見た。





ふと、骸の目線に気がついたらしいが、こちらを向いた。
それから、にこ、と笑って手をひらひらと振った。










「……ぶふーッ!!!!!!!!!!!
「「ちょ、えええええ!!!!!?????」」










思いがけず鼻血を噴いた自分の上司に、
犬と千種は思わず立ち上がったのだった。





「(どこらへんに惚れたのかわかんないびょん……)」
「(恋は盲目だから……)」


Lovesickness+3





高校生になった骸は、と話すという段階にやっと着いていた。

「六道、一緒に帰ろうか」
えっ……!
「よければ買い物に付き合ってくれないか?夕飯を作らなきゃ駄目なんだ」
「はい、どこまでも永久にお供します!」
「はは、六道はおもしろくて、私、好きだな





「(す、好き、好き、好きって……!!!!!!!!!!!)」





骸の中でその二文字だけがエコーする。

「じゃあバイバイ、千種、犬」
「じゃーなー
「……じゃあ」

骸はスキップをしながら、
は柔らかく笑いながら教室を出て行った。





「(骸さん……キモいびょん)」
「(もはや手がつけられない……)」




「キャベツはどっちがいいと思う?」
「こ、こっちですかね……(新婚会話!新婚会話!)」

頭の中でじたばたしながらも、顔には出さない骸。
しかし、少しばかり頬に朱が差している。





「六道は色々知ってるな!」
「いえ……!のためですから!
「?私のため?」
その内嫁ぎに行きますよ!
あはは、分かった、待ってる





いつのまにか、告白終了、そしてカップルに(片方が冗談だと思っている)。

Lovesickness+10





骸!
……っ!寂しかったです!
「ごめんごめん、意外と忙しくてね」

中学生から10年。
骸とは無事結婚していた。

黒のエプロンを着た骸とスーツを着たとでは、
立場が逆転している気がしないでもない。


「あ、……おかえりなさい

骸は頬を染める。

うん、ただいま










「……ぶふーッ!!!!
「「えええええ!!!!!!!??????」」

夕食を食べに来ていた犬と千種は絶叫した。

「あ、骸、鼻血が出てる」
「ていうかなにゆえそんなに冷静なんれすか

んー?といいながら骸の鼻血をふき取るは笑っていた。





……ッ!マジでカッコイイです惚れ直します
どうしてくれるんですか!

「うれしいこと言うね。んー?










は一瞬、いつもは見せないにやりとした笑みを零すと、
骸の唇に自分の唇をくっつけた。










放心している骸を後ろに、
は呟いた。

「あ、今日は肉じゃがなんだ。





さすが私の嫁サン





は結んでいた髪を解いたのだった。




















「(いたたまれないびょん……)」
「(…恥ずかしい)」