「オイ、カタツムリの。買い物行くからついて来い」
「へっ……?」
……内心、ドキリとしてしまった私って一体。
★
こんにちはです。
今は幼馴染のそーご君と買い物に来ているのですが。
「(し、せんが……!)」
私の隣にいるそーご君に注がれる羨望。
昔から、顔が整っていますからね。小さな頃は、よく声をかけられていたものです(そーご君が)。
そして……私に注がれる嫉妬。
ちくちくと痛いのです。
痛いのですが……。
お腹の底から湧きあがる、ぞくぞくとした何か……。
くすぐったくて、嫌ではないのです……しかし……。
変な、気分、です。
……うー。
ツボ押しされている気分です。
痛気持ちいいみたいな…………はっ!私は何を!
「(私ってば、おかしくなってしまったのでしょうか!?)」
あうー!と唸り頭を振る私に、そーご君が冷たい声をかけました。
「オイカタツムリの。ちゃっちゃと付いてこい。
……あ、カタツムリだから無理か」
「はへっ!?(どくどくどくどくどくどく)」
ひ、酷い……!
しかし、そんなことよりさっきから心臓が活発に動いていて死にそう!
ふ、普通ならそーご君を責める、べき、なのですけど……。
震える体を抱き締めて、そーご君に返した。
「そ、そーご君。カタツムリ、はやめてください」
その瞬間、ぎろりとそーご君がこちらを睨む。
どくどくどくどく。
収まってきていた心臓がまた活発になり、顔に血が巡る。
「あ?カタツムリのクセに口答えするなんて……」
侮蔑の混じった目線。
見下した態度。
が、しかし、しかし……ッ!
「(ぞ、ぞくぞくする……!)」
指がぴくぴくと麻痺。
心臓が動きまくっている。
周りの人の、怪訝な視線。
私への、嘲笑。
まるで、恋に落ちたような感覚……!
……がくがくと、膝に力が、ガガガっ、入らナ、く、なって……
「あ、あ、あ」
もう、らめぇっ……!
「失礼しますうううう!」
「オイ、!」
そーご君の言葉も無視して、私は走って逃げた。
★
「うう……ごめ、なさい……」
「はぁ?聞こえないですねィ」
昔はこんな風じゃなかったんですよ、とそーご君の擁護に走る脳味噌。
私は10分後、無事そーご君に捕まってしまい。
今は屯所で土下座中。
私の頭にはそーご君の足。
うう……鍛錬していた隊士さん達が何ごとかと見てきますよう……。
……けど、けど!
「(やっぱり何かぞくぞくする……!)」
羞恥心より先に、胸から弾けだすような何か。
温度で言うなら適温。
寒くも、暑くもない。
温い、何か。
……そうだ、冷たい指を、お湯につけるような。
「ごときがよそ見してんじゃありやせんぜ」
「ヴぁっ」
顔をつかまれてそーご君の方を向かされた。
目線が、隊士さん達の方を向いていてしまったようで……。
鋭い目に、何か淡い期待のようなものが芽生えて……
って、何言ってるの私!?
そーご君が、汚い物を見たように、顔を歪めた。
その顔に、背中に電流が走る。
「……顔がニヤけてますぜィ」
「ヴぇっ!?」
う、嘘だ!
そーご君は、続いて嘲笑。
頬にこめる力が増える。
「苛められて喜ぶなんて……とんだマゾですねィ、?」
「!?ヴぉ、ヴぉー!」
にっこりと笑って、そう言われた。
違う!と叫びたいのに、頬をつかまれていて上手く喋れない。
その状況に、息が上がって頬が熱くなっていく。
やだ、コれ、興奮みたいで、
やだ、イヤ、「」
名前を呼ばれて。
「もっとイジめてほしいですかィ?」
ぶわり、と。
花が咲くように嘲笑された。
私は知らず知らず頷いてしまっていた。
快楽=悦楽
(何て破廉恥!)