「うがーっ!何で休みになってまで勉強しなくちゃいけないんれすかー!!!」
「…犬煩い」





外ではジーワジーワと熱く蝉が鳴く。





そんな中、蒸されるような教室の中、2人は居た。
一人は居残りの常連、城島犬。
もう一人は珍しくも、犬の仲間、柿本千種だった。

千種は、テストの日に運悪く体調を崩し、休んでしまったが為に補習に来ていた。

このクラス、というか黒曜中は不良が多いが一年は少なく真面目なものが多いことや、
「不良でも勉強できれば言い訳はいくらでも出来る」不良が多いため、
補習になるのは、ごく少数だった。
この二人以外の補習者は部活などがあったりするため午後から来る事になっている。

「犬がもうちぃーっと勉強しっかりしてりゃあ、補習も無かっただろうよ。
というか柿本を見習え。おら、やっぞ」
「…」
「うー」
「お前はワンコロか」

千種は唸る犬をじとっと見てから、中指で眼鏡を押しあげて、溜め息をつく。

「てかいっつもお前大人しいのにどうした?」

いつも、とは夏休み中の補習期間を指す。

「…犬、今日誕生日だから」
「…7月28日?」
「そーれすー」

ぶすっとしながら机に突っ伏しだるそうな声を上げる犬。

「おめでとー」
「それだけれすか!?」
「え」

「そういうもんでしょ?なー」とが千種に同意を求めると、
千種も渋々頷く。まだは嫌いらしい。

「ほらっ、早めに切り上げてやるからしゃきっとしなさい!」
「!へへっ、やっぱ好きれす!」
「先生付けろー」

しょうがない
大きな雲が、ぷかりぷかりと浮かんだまま。