「ぜん、ぜぇ……」
「よし……お前等、よく頑張った!」
俺の声に、堰を切ったような泣き声が、教室を満たす。
合唱祭は。
――結局、3位という結果に終わった。
賞がもらえるのは、2位まで。
自分の持つこのクラスは、賞がもらえなかった。
……いや、きっと、そんな事じゃない。
こいつらが、悲しんでいるのは。
それまで頑張ってきた「努力」が。
報われずに、地に落ちてしまったことが――
「……全員、頑張ってたよな」
「…香川」
小さく呟いた香川。
こいつも一時期、不登校になってたんだが、今日に備え、よく顔を出すようになっていた。
俺は、眼鏡のブリッジを押し上げた。
「香川の言う通り、全員、頑張ったんだよ。だって3位だぞ?すごくないか?」
「……」
「凄いことなんだよ。3位を獲れるっていうのは。
だからさ、全員、自分を褒めてやれよ」
俺も、目一杯お前等を褒めてやる。
「お前等は、すごいんだよ」
そう言うと、こくこくと、上下に揺れる頭。
俺は少しほっとして、顔を緩めた。
……少しだけ、自分の青春が、懐かしくなった。
Yourself
全員、頑張ったと思うから。