結局その後、骸は学校に来なくなった。
もう来なくなって三日経つ。

毎日欠席の連絡が入るものの、こちらから電話すればいつも留守。





「…」





確実に自分の所為だ。
日に日に、責任が重くなっていく。





「(柿本……じゃないな、犬辺りに聞くか)」





話だけでも聞かないと。
そう思いながら、階段を上りきった。

視界に映った何かに、顔を上げる。





「!……柿本」
「…」





そこには、じっと佇む柿本がいた。
いつもより、ずっと冷淡に見える。
こちらを睨む目に、何故か掌に汗が滲んだ。

親指を丸め、拳を握る。
柿本とはあまり仲が良くない。





「(けど、聞かねーと、)」





骸の事を。

焦る気持ちが募る。
それでも、声が喉を滑っていった。





「あのさ、柿本、」
「…」
「最近、骸、休んでるだろ……?」
「…」

貫きとおされる無言。
それでも、問いかけを止めることは出来ない気がした。





「何か、」
「お前のせいだ」





「っえ?」





瞬間、何かが切れたように、柿本の拳が飛んでくる。
すぐに反応できず、構えようとした手だけが浮く。





現実を直視するのを拒否して、目を閉じた。





「っ柿ピ!」
「!」





「……?」





尻餅をついて、閉じていた目を開く。





そこには、柿本の手首を握る犬。





「行け!」

犬が、何か叫んだ。

「え、あ、」
「早く!」
「……、……っ」





わけがわからないが、階段を下りた。
必死に、必死に。





ただ、ひたすら。





「っつ、はぁ、っ、」

怯えた心臓が、過呼吸を促す。
空き教室に入り、鍵を閉めた。





「……っ、」





ずる、と壁に凭れる。





『お前のせいだ』





額に、少し汗が滲んでいた。

何かが変わる音
もう、逃げられないのだ。