皆が仲良く帰っていく中、私は日直の仕事を押し付けられて、
教室に一人ぼっちで居た。

「…」

ぽた、ぽた、ぽた

皆が笑って私を頼ってくれる。
けれども違う気がするのは、何故?

ちょっと胸がきゅう、となって喉でつっかえる。

そのまま、目で泳いでいた水が瞬きした瞬間に
つう、と頬っぺたを流れた。

「あれ?」
「!」

びくり、と肩を揺らして
目をごしりと擦る。

「…えーと、誰だっけ?」
「え、と」
「最近転校してきた子だよな?えーと、凪…っていう名前は思い出せるんだけど…」

腕組をしながらむう、と口を一文字にする他のクラスの…先生?は子供っぽかった。

「わりー名字思い出せない!」
「あ、」

名字、教えなきゃ。

そう思ったけれど、
口がつむいだ言葉はよく自分でも分からなくて、

「凪、でいいです」
「ん?」
「あの、凪、でいいです、先生?」
「なんで疑問的なの」

ふ、と笑うと、その先生は眼鏡を直す。

「日直?ちゃっちゃっとやってかえんな、危ないから。
戸締りしといたげる」
「は、はぁ」
「大丈夫大丈夫、なんにも見返りとか要求しないから」

笑いながら先生は窓に鍵をかけていく。

「よし、じゃあちょっと先生まだプリントとか作んなきゃ行けないから職員室戻るけど、
早めに帰りなよ」
「は、い」
「それと、目は擦っちゃダメだからね凪!」
「!」

先生はバイバイ、と手を振りながら一定のリズムで歩いていった。

ふがいないや
あ、名前、聞いてない。