「せっ先生!…っ先生!」
「あれ、俺?」

ぼうっとしながら誰かが叫んでるなあと思いつつ廊下を歩いていたは、
自分の名字を呼ばれその声が自分に対してかけられている事に気付いた。

きょとん、としながら眼鏡を手で直しつつ、後ろをくるりと振り向くと
息を切らした骸が膝に手をついて俯いている。
時折小さく息を呑む声がする。

「どーした六道、廊下は走っちゃいけないんだぞ」
「そ、そんなの酷いじゃないですか…先生を探してたのに」
「わりーわりー。でもはしんなよ。…で、どしたの」
「あの」

きゅう、と唇をかんで目線を下に落とす骸。
ははて…?と首をかしげている。

「その…」
「うん」
「ちょ、そんなしっかり聞かないでください!」
「え。…うん、まあ分かった」
「実は…その…この間…」
「……」
「何か言ってください!気まずいでしょう!?」
「ちょっ、お前どっちだよ!」

余りにも理不尽な要求にはぐぬう…と唸る。

「あの…ですね」
「…うん」
「この間…B組の…」
「B?」

ん?とどこかひっかかるような感じには思考を巡らせる。
やがて閃いたように目を少し大きく開く。

そして人差し指で「分かった!」というように骸を指差す。

「…凪か!」
「!た、多分」

の口から出た女生徒の名前に驚きながらもこくり、と頷く。

「で、凪がどうかしたの?」
「そ、れです」
「は?」
「だから、名前!呼んでるじゃないですか…」

最後のほうは弱々しく答える骸にはきょとんとした後、ぶはっと噴出す。

「ちょ、何で笑うんですか!」
「いやー名前を呼んでほしいのね?骸ちゃんは」
「!そ、そうですよ!悪いですか!」

一瞬自分の名前をつむいだにどきりとするもしっかりと返す骸。

「呼んだげるって、そんくらい」

笑わないで
後日、既にクラスの半分以上が名前呼びなことに骸は気付いたのだった。