「…兄さん」
「よぉ恭弥」

一昨日から降っていた雨は止んで、
真っ青な空が広がっていた。

そんな澄み切った空を裂くようにインターホンが鳴って、扉を開ければ
久しぶりに会う、あの人がいた。

「どうしたの?」
「んー、何か従兄弟の顔を久々に見たくなってだな」

そう言うと、後ろからひょっこりと顔を出す、小さな少女。
兄さんの、妹だ。

髪を大きな赤い玉のついたゴムで高い位置に二つで縛って、
大きなどんぐり目がこちらを見ている。

僕はその子から目線を外し、兄さんを見る。

「変わんないなーやっぱり!」
「…(何それ)その子、預けてたんじゃないの?」
「たまには遊んでやらなあかんでしょーよ。なーちま?」
「?」

彼が同意を求めるように目線を下に向けると、小さな少女―ちま―は首をかしげる。

「という事でどっか出かけない?無理だったらいいけど」
「別に大丈夫。ちょっと用意してくるから、中で待ってて」
「いや、外でいいよ」
「そう」

少し早歩きで家の中に戻って、顔を少し手で覆いながら
頭の中でぐるぐる考えを巡らせる。

あの人が来た。(本当に、久しぶりだ)
一緒に出かけられる。(あの人の妹も一緒だけど)
財布、どこだっけ。(確か、机の上)

ああ、急がなきゃ。

「待った?」
「全然。どこ行く?」
「とりあえず昼食。もう昼でしょ」
「おー、じゃあ和食でいいか?」

こくり、と頷けばよし!と頭をわしゃわしゃと撫でられる。
暖かくて、くすぐったい。払う気には、到底なれない。

「この間だなーいい店があってさーちょっとマークしてたの」
「ふぅん」
「だってさ、今日」





ゆっくりと時が止まって、目を見開いて、
それから、





泣きそうに笑う
「恭弥の誕生日じゃん?」そう言って笑った兄さんに、何かがはじけた。