「…お兄ちゃん」
「んー?」

晴れだというのにお気に入りの赤い長靴を履いて数分前に出かけたちまが戻ってきた。
玄関に立ったままどんぐり目でこちらを見るちまに苦笑しながらは目線を合わせるようにしゃがむ。

「どしたの?」
「…これ」

少し土にまみれた白く小さな手が持っていたのは、少し元気を無くした小さな黄色い花。
ついでに、ハート型をした葉もついていた。

「クローバー…あげる」
「…あーっとね、ありがと。…でね、ちま、これクローバーじゃないよ」
「…違うの?」

こてん、と首を傾げる姿はさながら小動物だった。

「あのね、カタバミっていうの」
「カタバミ?」
「オキザリスとかっても言うね」
「リス?」
「いやいやリスじゃなくって」
「カタバミ?」
「そう、カタバミ」

目線を合わせて、にへら、と笑う。
癒しだ。そうは思う。

「じゃあさ、ちょっと枯れそうだから、お水に入れてあげようか」
「うん!」

ちまは靴をぽいっと脱ぎ捨てると土が少しついた手での手を引いたのだった。
いつもの日常
花言葉は、あなたとともに。