ほら、恋に落ちる瞬間ってあるじゃない?

それって人それぞれだと思ってる


朝、廊下で「おはよう」の声に恋に落ちるとか

部活やってる姿に恋に落ちるとか

要するに人それぞれってことよ

まぁ、時々、おかしい恋の落ち方とかあるけど


ちなみにこれは私の意見、

多分私の恋の落ち方はおかしい方に分類されると思っている






正しい人間の日和での恋の落ち方






「・・・」

言葉を失った理由はいくつもあるが、

代表とされるものは1つだと思う。


「・・・太子、ですよね?やっぱり」

校庭の中庭。

気分転換に授業をサボってここに来たはいいが

誰かが埋まっているのが見えた。(その瞬間誰かなんて理解できたが

もちろん、反対に埋まっていて顔はおろか、腰まで埋まってるので誰か判別不可能。

しかし、多分、いや絶対、これは太子なのだ


私はその場に座り込み、どうするべきか少し思案する。

太子とは仲がいいと思っている。

まぁ、生徒会で一緒だしご飯とか一緒に食べてるし。(私的には妹子のおまけ程度の認識


「太子ー、生きてますかぁ?」

「・・・・・・・・・・・・」

返答はない。

死んでる?まさかこの人に限って

しかし、いや・・・まさか


「っ」

いきなり背中に悪寒がはしって私は瞬間的に太子の足を持って引っ張っていた。

これがまたなかなかキツくて、ちょっとやそっとじゃ抜けやしない

私は、一回落ち着くために深呼吸を5回ほど繰りかえす。


「せーのっ!!!!」


スポンッ!と軽快な音ともに私はしりもちをつく。


「いってー、」

「は、はぁはぁ・・・死ぬかと思った、」

「それはこっちの台詞です」

スカートについた土を払う。

太子は横たわったまま私を見た。


よくやった・・・かなりクリアに三途の川が見えたな」

「――――――――――――――――――――っ」

胸の奥、何かがはじけた音がした

飛び上がるくらいの音で

え?

「・・・?」

太子はゆっくりと起き上がる。

腰から上は土だらけ

「あーあ、土だらけ」

「・・・・あ、あぁ・・・」

私は太子の土を軽く払ってやる。

太子は、少し気恥ずかしそうに黙ったまま

「な、なんですか?」


あぁ、顔がまともに見れない。

だって、嗚呼・・・

貴方の顔を見た瞬間、顔が赤くなる。絶対に

何かがはじけたあの瞬間から私はおかしくなった


「・・・な、なんでこんなところに埋まってたんですか?」

恥ずかしくて私は話題を変える。

太子は思い出したように語る

「それはだな、あれだよ。黒駒にチャレンジしたんだ」

「乗れないのにですか?しかも調子丸君今日お休みですよ?」

「そうなんだが、逆にな」

少し自慢げに喋る太子。

もう一度埋めてやろうか?


「で・・・埋まったわけですか?案の定」

「う、今回はいけると思ったんだ。」

「どこにですか?三途の川の向こう側ですか?」

冷静を装う。

何だ、この気持ち

変だ、青春みたいだ 嗚呼、似合わない似合わない。私の柄じゃない


「まぁ、気をつけてくださいね?」

「あぁ。が通ってくれて助かったぞ」


無邪気な笑顔を見せないで

輝く瞳でこっちを見ないで

お願い、


「いいえ、どういたしまして」

そっけなく返す。

きっとこれは、うん。あれだ。でも言わない

このわけの分からない気持ちを内緒にしたまま中庭を出ようとする。


その時、

?」

「っ、」

太子に呼び止められる。

何期待してんの、私。ばっかじゃないの?ばぁか

「・・・何ですか?」

私は振り返る。

平然だ。私は普通。

太子は先ほど同様輝く瞳で見つめてくる。だからやめてって


「もう一回黒駒チャレンジしていいか?」

「・・・逆にですか?」

「逆にだ!」

・・・期待してた私がいた

「ダメです。」

「えーっ!!」

「えーもくそもない。埋まった太子をまた引き上げられるほど
私は妹子みたいな筋肉おばけじゃないですから」

「だめかぁ、」

「ダメです」

あー、だめだ。このおっさん

多分末期の馬鹿なんだ。救いようないんだ

なのに、かっこよく見える私も末期なんだ


おかしいよ。だって

「おはよう」の言葉にときめいたりしない

部活をやってない太子だからこれもない。

じゃあ後は?視線があったからって何も感じなかった


腰まで埋まった太子をなんとか引き抜いただけ

それについて当たり前のお礼を言われただけ。

なのに、どうしてかっこよくみえてしまうの?


「むー、残念だ。せっかくの前で颯爽と黒駒に乗る姿を見せてやりたかったんだがな」

「――――――――――」

チラッと太子を見る。

残念そうな顔を見せている。


その瞬間、また何かはじけた

切ない衝動に駆られて、わけの分からない気持ち

まただ。また、


「じゃあ、もう一回だけですからね?」

「いいのか!?」

「一回だけなら許してあげます」

「よしっ!任せろ!颯爽と乗ってやる!」


またそんな無邪気な笑顔を見せるの?

またそんな輝く瞳で私を見つめるの?

やめてっていったのに



「あー・・・」

まぁ、結果は考えれば分かるんだけどね

半ば、許した自分を恨めしく思う

無理に決まってんじゃん。太子だよ?馬鹿だよ?

また埋まってるよ、どうしたもんか、これ


は溜息をついて引き抜くことに専念した。

「せーのっ!!!」

「・・・っぷはぁ!!よくやったっ」

「も、もう嫌ですからね・・・っ」

私はその場に座り込む

結構力がいるからな、太子引き抜くの


「あぁ、ありがとな」

「っ!!!」

またはじける何か。

今度はとっても大きく、飛び上がるくらいに

「あ、」

「???」

音が聞かれた気がしていきなり恥ずかしくなって逃げるようにその場を去る

っ!?!」


嗚呼、もう嫌だ

何で私が?私が?

青春なんてがらじゃない、似合わない似合わない

そんなのどっちかっていうと苦手よ、嫌い嫌い


「ど、どうしたんだ?いきなり走り出して・・・っ」

「っ!?」

思いっきり走ったつもりだったが太子は私のすぐ後ろで息を整えていた。

高校になると女の子の体力って落ちちゃうんだ

そんで男の子は体力思いっきり上がるんだね


「やっぱり、太子は男の子なんですね」

「いきなりなんだ?」

「いや、そう思っただけです」

私は諦めたような笑みを漏らす

「っ!・・・反則だ、」

「え?」

「その笑顔は反則だ。だめだ、卑怯だ」

「な、何がですか?」

「そんな笑顔で私を見るな。我慢できなくなる。」

「――――――――――――――――――――」

そんなこと言わないで

嗚呼、もうっ


「太子だっておんなじですよ」

「?」

「無邪気な笑顔で笑わないでくださいよ。」

「っ、な、」

「輝く瞳で私を見つめないで、お願いだから」


俯いてしまう。

まともに太子の顔なんて見れない。

太子は止まったまま。固まったまま。


、それって・・・」


私は鈍かった。


だけど ほら、今だって鳴り止まないではじけてる。


それってこれなんでしょ?




今、気がついたんだ
    貴方のこと好きなんだ






「恋の落ち方が人よりずれてるってことですよ」

「私としてはそれでいいと・・・思う。」

「ですよね。」


私が笑うと太子も笑う。

恋の落ち方がずれてるから貴方と伝え合えたんだろう