可愛らしい独占欲

 

誰かと結ばれたいとか、誰かを愛したいとか。
 
そんなちっぽけなことで、もし人が変わってしまったら。
 
他者から見ればソレは変化でも、自分から見れば「正しいこと」なのだろう。
 
 
 
 
「ねぇ、僕綱吉が好き過ぎておかしくなりそうなんだけど」
「・・・最早その発言が十分におかしいよ」
「そう?素直で良いでしょ?」
 
 
くすくすと笑ってそう言うと、綱吉はむぅ、と膨れっ面をしてそっぽを向いた。
・・・可愛い。
 
執務室のソファに深く身を沈めて、笑顔を向ける。
仕事もないし、ボックス開発は一時停止を綱吉に言い渡されている。
つまり、暇。・・・もう少し綱吉をいじって遊ぼうかなぁ。
 
 
「・・・大体ヴェルではさ、発言が軽率なんだよ」
「そうかな。意外と本気だったりするかもよ?」
「『だったりするかも』の時点で自分の発言に確信持ってないじゃん」
「そんなことないよー」
 
 
眉根を寄せ、目を細めて僕を見る。
 
正直、冗談は言っていない。
甘すぎるところはあるし、ボスとしてどうなのかを考えさせられることもあったりするものの、『優しさ』という点については、ファミリーの頂点に立つものとして見習うところがある。
事実、その優しさに救われ、現在同盟ファミリーになっているマフィアだってそう少なくはない。
そういった所も含め十分魅力的だと思うし、なにより笑った顔は可愛い。
 
 
「じゃあ綱吉は誰が好きなの?」
「・・・へ!?あ、いや、別に好きな人なんか・・・っ」
 
 
顔を真っ赤にして口ごもる。
・・・無防備。
 
あたふたしている綱吉にそっと近づき、後ろから抱きすくめる。
 
 
「ぅ、あっ!?」
 
 
びくりと肩を震わせ、身じろぐ。
離さないようにぎゅう、と抱きしめ、綱吉の肩口に顔を埋めると、綱吉が小さく息を呑むのが分かった。
相変わらず小さく細い体を抱え込むように抱きしめていると、それでもなんとか落ち着きを取り戻したらしい綱吉が可愛らしくじたばたと抵抗を始めた。
 
 
「ヴェル、デ・・・っ」
「うん?」
 
 
小さく暴れる体を強く抱きしめると観念したのか、抵抗を止めて、コテン、頭を僕の上に預ける。
 
 
「綱吉、心臓凄い早いけど大丈夫?」
「う、うるさいなぁ!ヴェルデのせいだろっ!?」
「・・・それって、意識してくれてるってこと?」
「っし、してない!てゆーか、しゃ、喋るなよ・・・。首、くすぐったい・・・っ」
 
 
綱吉が余りにも可愛い声でそんなことを言うもんだから顔を上げて横から覗き込むと、真っ赤になって涙目になっていた。いや、耳も真っ赤だけど。
 
 
「み、見るなよ」
「いいじゃん、可愛いよ」
「・・・嬉しくない・・・」
 
 
真っ赤になって泣きそうな声を上げる綱吉にくすくすと笑って後ろから頬にキスをしてやる。
うん、可愛い。
 
 
「ねぇ、僕綱吉が好き過ぎておかしくなりそうなんだけど」
「・・・さっきも聞いた」
「うん、言ったよ。でも、本気だからもう1回言ったの」
 
 
伸ばしている後ろ髪を指に絡めてキスを落とす。
解いた指から、柔らかい髪が舞うように落ちる。
 
 
「・・・じゃあ、オレ以外にこーゆー風にキスしたり抱きしめたりしないで」
「勿論」
 
 
 
 
 
 
 
 
ただ一人、愛する君が望むなら。