いつかこの大空を飛べる日が来るだろうか。

微睡みの中、考える。ふやけた様な思考回路で考える。それはまるで白昼夢の様に、私を惑わせる。
吸い込まれるような海のあおと、空のあお。それが交わる水平線。あおのせかい。セカイのあお。
指先から、融けてしまうような気がして、でも、体は動かなくて。
融けて、セカイと同化しているのか、とも思う。セカイとワタシの境界線があやふやで、ずきりと頭が痛む。
』という存在と『ワタシ』が違える。
『ワタシ』は『ワタシ』で『』も『ワタシ』同じで違う。その違いは私にしか解らない。

セカイはこんなにも広い。

融ける。セカイとワタシが、『ワタシ』と『』が、融ける。



そんな時、声を聞いた。

「    」
ワタシを呼ぶ。

「    」
繰り返し、繰り返し。確りとした声で呼ぶ。

ずるずると、現実に引き戻され、体の感覚がはっきりとし、脳が覚醒していく。


私を呼ぶのは誰?



「マスター…?」
「ああ、う、ん…おはよう。」

ふるふると、睫毛を震わせて、顔を覗き込んでくるミク。笑みが零れた。

「マスター?」
「大丈夫だよ、ただちょっとうたた寝をしていただけだから。」
「よかった。」
ミクが心配そうな目をするから、大丈夫だとあやすように言ってあげる。笑顔が咲いた。

「そうだミク、海に行こうか。」
「うみ…?」
「そう海」
「いっ…いく!」
「なら、準備をしなきゃね。」


彼女は、そのシンリを、理解できるだろうか。私には計り知れない。


セカイは広い。



「ミク、」
「マスター?」
「名前を呼んで、『』って」
「『』?」
「うん。」





アイデンティティ