”笑っていて欲しい”





このハルヒの何気ない言葉で、
後にある事件が起こるのだった。





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「…空間の歪みが生じている」
「え?」
「来て」

はすっくと立ち上がると、骸と恭弥の服の袖を引っ張る。

「ちょっ、ちょっと待ってください!」
「…何」
「…それは、僕達が帰れるって事?」
「…そう。歪みが生じているのなら、そこから帰ることは可能」

恭弥は眉間に皺を寄せ、言う。

「…僕は、まだこっちにいたいよ」
「…でも」
「僕もです」
「…今を逃したら、帰れないかもしれない」
「…それでも、いたいんです」

は二人をじっと見る。





「…歪みが消失した。…次の歪みが出来るまで待つしかない」





は二人の手を離した。

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ガチャン、と白い陶器が割れた。

それはの手から滑り落ちたものだった。
恭弥が少し焦ってやってくる。

「大丈夫?」
「…平気」

かちゃん、かちゃんと破片を拾う

「…ねぇ」
「…何」
「最近、ぼうっとしてるでしょ」
「…」
「六道も心配してたんだけど」

は、じっと恭弥を見ていたが、
ふ、と顔を逸らし、目を細めた。

「…情報の伝達に齟齬が発生しているのかもしれない」
「そご?」
「…でも平気。私はそれ以上の行動をする事は不可能」
「行動って?」
「…恭弥たちを観察して、情報統合思念体に報告する事」
「…ねぇ」
「…何」
「前から聞きたい事があったんだけど」





「君って、魂、あるの?」





はじっと黙り、
こう返した。

「…禁則事項」

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こたつでまったりとしていると、が喋った。

「…歪みが発生した」

が立ち上がると同時に、二人も立ち上がった。
そして、小さく会話する。

「…もう、と離れなければいけないんでしょうかねぇ」
「…短かったね」
「そうですね。まぁ、しょうがないといえばしょうがないんですけど」










”なんで僕達は出会ってしまったんでしょうかね”










恭弥は、その言葉に顔をゆがめた。

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「…あった」
「これですか」
「…」

骸がぐにゃりとそこにだけ開けられたブラックホールのようなものを指差すと
は頷いた。

「…ここに入れば、元に戻る」
「…そうですか」

は何かを呟く。

「…情報改変は行った」
「ありがと。…そうだってこっちの世界に来れるんだよね」
「…」

はこくりと頷いた。

「…でも、私はここで涼宮ハルヒを観察しなければならない」
「…そうですか」

骸が眉を下げて、の頭を撫でる。

「…では、さようならですね」
「…そうだね」
「…」

は俯く。





大きな目には、地面が映っていた。