別れようとした。
その時だった。

「…涼宮ハルヒが動いている」
「「は?」」
「…」

じぃ、とは自分の手を見る。

それにつられて、骸と恭弥は、
視線をの手に落とす。

「!」
「なんですか…コレ…」

骸がの二の腕を掴む。

「…分からない…でも…これが涼宮ハルヒが起こした現象である確率は高い…」





の手は透けていた。
徐々にゆっくりと侵食するように透けていく。





「…」

その時、の携帯のバイブが鳴る。
恭弥は「ごめん」と言って、のスカートのポケットを探る。
通話ボタンを押して、の耳に押し当てる。

「…
「…有希」

((あの子か…/ですか…))


二人の無機質な話し声が聞こえる。

「貴方は涼宮ハルヒによって、異世界へ行く事を許された。
元々貴方は特別な存在。
涼宮ハルヒに【 】として望まれている。
そして、主流派にも関らず急進派の域にも踏み込んでいる」
「…」
「貴方が…異世界へ行かないと閉鎖空間が発生する」
「…何故」





「…涼宮ハルヒが、彼女が貴方に幸せになって欲しいと願っているから」





そう有希がいうと、電話は切れた。
恭弥はの耳から携帯を離す。

「…?」
「…私は、貴方たちと一緒に居なければならなくなった」

そう言っている間にも、の膝下は透けていっている。


ぽた、ぽたっ。


「「!!」」

感情を見せないが、泣いた。
静かに、大きな目から涙を流す。その顔は無表情だった。

「…………それは、私が齟齬を発生させても、望んでいるから。
貴方たちと居たいと願うから。
それが…涼宮ハルヒの願う事だから」





”…私、には笑ってて欲しいのよ”





は、少し俯く。
悲しんでいるわけでもなく、ただただ、そこに俯く。

「…

恭弥の声がして、ゆっくりと顔を上げる。

「僕達も、と一緒にいたいんです」
「…」
「エゴだったけれど…実現するのなら」





深く、考えるのは止めましょう?





は、ゆっくりと瞬きをした。
すでに、胸から下は透けていた。

「僕たちは先にいってるよ」
「待ってます

二人はブラックホールのような穴に入り込んだ。
は、ゆっくりと目を閉じた。





【…わたし、は、貴方たちといたい…】

そう、はっきりと思ったとき、の姿と穴は、
この世界から消えたのだった。

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真っ白に見えるくらい輝いた世界の中、

私は自分だけの色を発する魚たちを見つけた。

私も小さな魚だけれど、それを見て自分をもっと存在あるものにしたかった。

たとえ、暗く真っ黒な世界に自分が放り込まれても、

その魚たちとともに自我をもって、

ただ、ひたすらに生きるだけ。それだけ。





「…骸、恭弥」

今、目を開けて、呟いた音に、彼らは笑うのだ。





たとえ、白と黒の色しかこの世に無くても、
貴方たちを見つける事は、絶対に出来る。





それが、私の存在。