「あの」

友枝が小さく切り出した。

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「どうしたの?」

恭弥が湯飲みにお茶を入れて、ことりとこたつに置く。

「…貴方だったら、例え上からの人から何か言われていても
自分なりに行動しますか?」
「…?…まぁ」
「人間って、やらなくて後悔するより、やって後悔した方がいいですよね!?」
「まぁ」

…何を言っているんだ?そう思いながらも恭弥は返事を返す。

「よかったぁ…今日来ちゃったのに帰らなきゃいけなくなったら無駄足だし」
「…?」
「だから」





空間がぐにゃりと歪む。





「!」
「…貴方たちを強制的に涼宮ハルヒに突き出せば、
涼宮ハルヒは何らかの変動を起こす。
きっと大きな情報爆発が観測できる。
またとない機会だわ」





友枝が、にこりと微笑む。





「強制的に、連れて行けば良いわよね?」





「!」

ガキィン!

大ぶりのナイフが、友枝の手には収まっている。
向かってきた其れを恭弥はトンファーで受け止める。

「あら、悪あがきするのね」

でも、と続けると、トンファーはさらさらと砂になる。

「!?」
「この空間では無意味なの。
私が作った空間だから、私の手足みたいなものだもの。
この際おっきな傷一つくらいどうってこと無いから、連れて行くわ」
「っ、冗談じゃない!」

「雲雀君!?」

そこへ骸がやってくる。

「チッ、遅いよ」
「よく分かりませんが…!!」

骸の目がヴヴ…と変わろうとする。
が、

「…!?変わらない」
「だから無駄だっていってるじゃない。
いいかげん諦めたら?どうしてそこまで傷つくのを回避したいのか、
私たち対有機生命体コンタクト用ヒューマノイド・インターフェースには分からないわ」
「…貴方も宇宙人ですか」
「そうよ?でも急進派なの」

勢いよく骸に向かっていく友枝の前に、
誰かが立ちふさがった。





ガキィン!

「!…!」





だった。友枝の持つ大ぶりのナイフを素手で掴んで、
手からは血がぽたぽたとたれる。

無表情のが、どこか冷たかった。

「貴方は、私の命令を無視してはいけない」
「何で?だって突き出せば大きな変動が見られるのよ」
「そうすればいいという命令はまだ来ていない。
貴方は勝手な行動をしてはいけない」
「…もう、だから嫌なのよ





貴方を殺して、
この二人を連れて行こうと思うのよ。

多少…致命傷は負わせてもね?」

と友枝が間を取る。

「…骸と恭弥は離れないで」
「ふふ、足手まといなのにね?」

友枝が作り出した先端のとがった棒は3人に向かっていく。

バシィン!

は手で其れを打ち落とす。
次々に飛んでくる其れをはなお目にもとまらぬ速さで弾きつづける。

「…パーソナル・ネーム下妻 友枝を適正排除対象と判断
目標排除」
「貴方の機能停止のほうが早いんじゃない?」





「情報解除を実行する」





「私には勝てないわよ?」

友枝が、ふふ、と笑った。