「外部的損傷は問題ない。まずこの空間を再構成する」
友枝の攻撃で、
瓦礫の山のようになっていた部屋が、元のリビングに戻っていく。
いつも置いてあるこたつも戻る。
を支えていた恭弥と、骸が目を見開く。
「…後は、外部的損傷」
の傷がゆっくりと消えていく。
二人はほっとしたように息を吐き出した。
「…」
はすべて傷を消した後、少しはっとしたような顔をして、
手のひらで顔をぺたぺたと触る。
「どうしました?」
「…眼鏡を…再構成するのを忘れた」
恭弥は、の前髪をかきあげた。
そこには、大きな目が瞬きする、整った顔があった。
「…そっちの方が、似合うよ」
「そう、ですね」
二人がそう言うと、が少し笑った気がした。
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「はぁ…疲れました」
「…ごめんなさい」
「別にが気にすることじゃないから」
「…下妻友枝の異常に気付けなかったのはこちらの責任」
「もういいですって」
ふ、と骸は笑う。
「それより、助けてくれて有難う御座います」
「…別にいい。悪いのはこちらだから」
恭弥はふ、と、の手を引いて、自分の膝の上に乗せる。
「ちょっ、何やってるんですか雲雀君!」
「良いでしょ別に」
「……」
にぎゅっと抱きつくと、少しだけ、香りがする。
ちなみに相変わらずは無表情だ。
「だって、ずっと六道と話してるし」
「(男の嫉妬は見苦しいですよ…!!)」
の知らないところで、実は自分争奪戦が開催されている事は知る由も無い。
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今日は三人で寝る事にした。
ちなみに、をはさみ、
川の字である。
「…骸」
「…?なんですか」
「…どこかで空間の歪みが何度か生じている。
もしかしたら」
「…帰れるかも、しれないですか」
「そう」
「…そうなんだ」
雲雀も寝返りをうって、話に参加する。
「僕は…(とは、一緒にいたいですねぇ)」
「…ってさ、こっちの世界にこれないの?」
「……出来ないわけではない。ただし言語で説明は出来ない」
「ふぅん」
恭弥はの右手を握る。
それに対抗するように骸は左手を握る。
「…」
は少し不思議そうな顔(というより雰囲気)をするが、
その後気にせず、寝てしまった。
「「…」」
「は渡さないから」
「…それはこっちの台詞ですよ雲雀君」
お互いにらみ合ってから、目を閉じた。
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「おっはよーう!ねぇねぇ下妻友枝って…あれ?」
「どうしたハルヒ」
ハルヒが顔を輝かせ、のもとにやってくる。
後ろには疲れた顔をしたキョンも居た。
おそらくハルヒが上機嫌なのは、突然の転校をした友枝の事だろう。
「が、眼鏡かけてないのよ」
「は?」
キョンがハルヒを押しのけて、の顔を覗き込む。
「あ」
眼鏡が、無い。そして、可愛い。
「ーっ!やっと外す気になったのね!可愛いわよ!」
「…痛い」
ぐりぐりと頬擦りするハルヒ。
それをキョンは不思議そうな顔で見ていた。
「これからはみくるちゃんといっしょにコスプレできるわね!
…………ねぇ」
「どうしたハルヒ」
急に大人しくなったハルヒに気付き、
キョンが声をかける。
「元気ないわね、。おなかでも痛いの?」
「…そういえばそうだな」
キョンも同意する。
無表情のだが、どこか雰囲気が元気無かった。
「…何でも無い」
そういうと、は本を読み出したのだった。
「…大丈夫かしら」
「大丈夫だろ」
「…私、には笑ってて欲しいのよ」
「(いつも笑ってない気がするが)そうだな」
「あんなに可愛いくて…。すっごく癒しなの。
…でもなんか今日は元気ないわね」
「…」
ハルヒの目は、とても真剣だった。
ふざけているときの目でも、世の中の不思議を探しているときの目でもない。
ただ、親友の「」を心配する目だった。
「(どうしたんだ…ハルヒが大人しいとこっちが怖いんだよ…
なあ、元気出してくれ。お前は、俺の
好きなヤツで、頼れる友達なんだから)」