お風呂から出て、ベッドに横になりながら、今日のことをふと思い出してみる。
「文化祭か……」
そう呟いていた筈なのに、頭は柳の顔を思い出していた。
そういえばこの間、柳はテニスの練習していた。テニス部なのだから、当たり前だけど。
――ついこの間、昼食を食べた後うっかり爆睡してしまい、気が付いたら夕方だった時のことだ。
空き教室をでて、廊下を歩きながら、なんとなく外を見たときだった。
テニスコートに柳がいて、思わず足を止めてしまったのである。
柳は結構身長もあるし、髪型も、変ってわけじゃないけど特徴的だからすぐ気が付いた。
柳は少し打ち合いをしてから、その後部員と喋っていた。
柳はやっぱり才能があるみたいで、周りには人がいて、とても良い雰囲気だった。
どんな雰囲気かと詳細を尋ねられると困るけど、青春みたいな。
もう、何もかも上手くいっている人間が、そこにいたような気がする。
「……」
そこまで考えて、あの時湧かなかった感情が少しだけ芽を出した。
焦りのような、少しだけ、妬ましいような。
シーツを握り締めて、それから「バッカじゃないの」と呟く。
そんなつまらない感情を湧かせて、子どもみたい。
柳は一つも悪くないし、テニスの才能があるんだからしょうがないじゃないか。
本当バカだね、私は。