正座してたら落ちた。

Her changeable life
〜彼女の変わった生活〜





おおおおお……





しかし落ちる高さが低めだったようで、
そのままベンチに腰掛けてしまうというミラクル。
でも臀部が痛いっていう。

変な声を出して悶絶する。

骨とか折れてないとイイナ!





辺りを見渡すとどうやら公園らしかった。
パンダの乗るヤツとか、ブランコとか、すべり台とか、鉄棒とか。





という事は日本ですな、と安心しつつベンチの後ろを何気なしに向いたら、










……
……










なんかオレンジ頭のお兄さんがいた。
お兄さんは、パーカーのフードを被ったまま停止中。
ジョギングの途中だったのか、拳が握られている。





「……見ました?」
「……あー、多分」





……そしてなんか聞いたことある声だった。

これは…………、バード・シー……みたいな。

お兄さんは拳を解いて、ぎぎ、とぎこちなく首を傾げる。





「えと……なんで落ちてきたの?





いや私も突然落とされたんですよ。




















「そういう信じられない経緯なので信じてくれなくても構わない……
……ていうか信じられませんよねえ〜」
いや、そんなことはないけど
「……前前から思ってたんだけど、
異世界住人てみんなそんなに柔軟な発想なの?
「さぁ」

お兄さんに経緯を話したらすごいすんなり受け入れられたよ。スゴイネ!

……もしこの人があのキャラならば、私はタメを使っていい……ハズ。
そして、予想が当たっていれば、多分年下。年上か同じに見えるけど。


しかし。


「何でそんな都合よく見られちゃったかなあ……あああああ畜生
「女の子がそんな汚い言葉遣いしたら駄目だって〜」
「いや、だって……」
「見られたらマズいの?」
「いや別に……」

ただ、ただね。

「私が、……こう、痛みに耐えていた部分を見たわけでしょ」どこのとは言わないけど。
「……あはは」





笑いで誤魔化すんじゃありません。





恥ずかしさで、顔に熱が集まる。
はーずーかーしーいー。





「もう忘れて、そんな昔の事」
「オッケー」
「よろしい」

私も記憶から削除します。ねっ!



「それはそうと君の名前は?」
「やっぱり君は最初にそれを聞いたりするのね……」
「え?」
「や、こっちの話だよ。私はです。もうそろそろ枯れてきた女子高生」





そして君は?と聞けば、ヒマワリが似合いそうな満面の笑みで名乗られた。





千石清純!男子中学生だよ〜。キヨって呼んでね!
「……オッケー





んー……まぁなんかマイナーだかよく分からんけど(キャラ人選的な意味で)、





やっぱりテニプリの世界に来てしまったみたいです。










「……あ、そうだキヨ……えーとさ、ここらへんに、なんかレストランとか無い?」




















あの後数分爆笑された。
何でと聞いたら「いや、いきなりそれかーって」と涙目で言われた。笑いどころがぜんぜんわからん……!

というわけで、キヨに連れられて某ファミレスに入店。
うーむ、ゲーム画面の背景が、いまここに!……というほども興奮しなかった。お腹すいた。





「パンケーキがこんなに美味しいのは久しぶりだぜ」
「初めてとかじゃないんだ?」
「だって自分の作ったパンケーキとかホットケーキとか美味しいと思ってるもん」
だって私好みの味付けになってるしねえ。





まぁあんまり作らないけどな。面倒だし。





「ふうん。……じゃあちゃんって料理得意なんだ?」

にこにこしながら、キヨが尋ねる。あとさりげなくちゃん付け(一応年上ですがな)。

うーん……この悪意が取り除かれたような笑顔を見てると、女好き、という掃き捨てた印象よりも、
女の子好きーっていうほんわりした印象しか浮かんでこない。

良い言葉で表わすなら紳士的……とはちょっと違うかもだけど。





「得意だよ。だってそういう仕事もしてたし」まぁ執事はそんなことしないはずなんだけどな。
「仕事……ってことはアルバイトとかしてたんだ。すごいね。
あ、それでさ、今度俺にも、お弁当とか作ってくんない?」
「いいけど」
うわ、やったー!





テンション高いけど、可愛いなこの子。
軽め……だがそれがいい、みたいな。

ていうか、ここで渋ったり、「イヤ」とか言ったら現実では恋愛ルートに入ったりするのかなあ、とか思ってしまった。
末期。

サラダのこまごましたのをフォークで集めながら、ぼんやりお弁当の中身を模索。

「何入れようかねえ……もんじゃもおこのみやきもお弁当とは言わないしねえ……」
「あ、あれ?何で知ってるの?」
企業秘密





……わざと言ってミステリアス感を出してみたけど、困ったな。
美人さんとかかわい子ちゃんなら子悪魔で済むけど、
平平凡凡な私ではただのストーカー臭がしちゃうんだぜ。






そう考えて自分をちっちゃくなぶっていたら、キヨが突然くすくすと笑い出した。
いや、くすくすっていうか、大きい笑いを堪えている感じか。





「なんていうか、ちゃんて予想外だ!」
おう?
「何か、……変わってるって言われるでしょ」
「まぁそーねー」腐だしなー。





ひとしきり笑いを収めると、キヨが身を乗り出す。
それから上目遣いで、私にお弁当のリクエストをしてきた。





……くッ、女の子でもないのに、上目遣いが似合う……だと……!





ハンバークとか、卵焼きとか、とびっきり女の子って感じなのがいいな!
……了解した





でもなんか、それを見せびらかしそうだな(部員とかに)、と思ったのは秘密で。






























2010.11.5