あー、死にそう…(死にません)

Her changeable life
〜彼女の変わった生活〜

あー怖かった。
もしもあたってたらどうなってたんだろうか。





考えるのやめよう(怖)





「ここ何処だろう…」

こんなの漫画でも見たことないな。
今は夜だ。

そしてなぜか、空はキラキラと宝石のように光っていた。

「紙にきいてみようかなぁ」

ここはどこですかっと。

するとじんわりと文字が滲む。










…ネバー…ランド…?










"Uninhabited Never Land"

確かにそうかかれていた。

「Uninhabitedってなんだっけ…?」

パソコンを出し、英訳機能で引いてみる。

「無人…」

人がいないネバーランド。
なんで?

とにかくここから去ろうと思った。




















「…夜なのに虹…」

本当にネバーランドなのだと実感した。
綺麗な泉や、見た事のない木なんかもあったし。

「あ」

木の家のようなものが見えた。
それはどこか不恰好で、
つくったものなのだと分かった。

「おじゃましまーす…」

そろりとはいってみる。
すると奥でなにかが光った。

「?」

それは羽。
蝶みたいな羽だけれど、透き通っている。
その羽は人間の背中についていた。
しかし人間にしては小さく。
ネイビーブルーの長い髪が印象的だった。


「(ティンカーベル…)」

それは、否、彼女は私が来たことにも気付かず、
足を前後にふりながら
なにか一心に目の前のものを見つめていた。

目の前にはモニターがあった。

不思議で、非科学的なこの場所に、
とてもミスマッチだと思った。





モニターには、外国人らしい栗色の髪の少年がいて。
少年は蒼いポロシャツと、黒の半ズボンをはいていて、
目は青っぽい緑。

「なんだコレ…」

するとはっとしたようにティンカーベルが後ろを向く。
髪と同色のアーモンド形の瞳が私をとらえる。
ついついびっくりして、後ずさってしまった。

けれど、彼女はそんなことを気にしていないかのように
モニターに目線を戻した。

私もつられて、目線をモニターに移すと、
先ほどの少年は少年といえない青年に成長していた。

「…?」

そのままじっと見つめる。
よく見れば、段々と背などがのびていったりしている気がする。
ティンカーベルが、そちらに目線をむけず、キャンディの入った瓶に手を伸ばし、
両手でボールのような飴を持ち、ちびちびと噛む。

ついつい、美味しそうな匂いが漂うので、
私も手を伸ばし、一つ口へ。
あ、アップル。

いつのまにかモニターの青年はおじさんになっていて、
先ほどまでは隣にいなかった綺麗な茶色の髪の女性がいた。





「コレ…」





なぜティンカーベルがこのモニターを見るのか分かった。
このネバーランドはおそらく少年だったこのおじさんが想像として作った世界。

おそらく現実世界ではもうこのくらいの年。
同じような世界(ネバーランド)はたくさんあって、その中の一つなんだ、コレは。

「あっ…」

先ほどまで、目の前にいたティンカーベルが消えた。
かじりかけの小さな飴は、そこにぽつんと残っていた。

どこからか、歌が聞こえてくる。





忘れないでNever Land
ピーターパンは子供だけの善意
海賊フックは子供だけの悪意
ティンカーベルは子供だけの時間






「…時間が…消えたんだ」

子供の夢見る世界はいつからか霧がかかったように見えなくなって、
けれどもいつかまた現れ
それを繰り返す。

消えることはないけれど。










いつだってデジタル時計のように正確じゃない。
壊れたシグナルのように点滅を繰り返す、

きわめて脆い、また変わった形の幸せなんだと、
そう思った。




























2007.7.19