…気持ちがいい。

Her changeable life
〜彼女の変わった生活〜





冷たい、固さと柔らかさの中間を辿ったようなものが、
ゆっくりと額から輪郭を撫でた。






「…ぁ……?」





蕩ける瞼を押し上げると、冬空のような青色が見えた。
……
ぼんやりしてて、イマイチわかんない……。

小さく眉根を寄せていたら、音が空気を震わせた。





さん、起きたんですね……」
「…………。……かい、ト?










柔らかく微笑んでいたのは、カイトだった。
MZDと違って、緩やかなカーブを描く口。





「……私、ねてた」
「はい、寝てました」
「…もっかい、ねる」





緩く掛かっているだけの布団を握り締め、胎児のように丸まった。
ああ、気持ちがいい。空気に触れていた掛け布団は、少し冷たい。





「…」










いや……待てよ?










なんでカイトがいるのォォォォォオオオオ!!!!????
きゃー!!??





きゃーじゃねえよテメェオトメンか可愛いな畜生!

え、ちょ、誰か説明プリーズ!説明!ほら!

がしっ、とカイトの肩を引っ掴み、
ずずずいっと顔を近づけた。
多分私ジョジョのごとき凄まじい顔してると思う。
ごめん自分でも何言ってるかわからない。

「えっ、えっ、えと、えっと……」
早く詳細
はいいいいっ!えと……朝、俺とマスターが起きてきたら、」





さん、ソファで寝てて。





「……」「……です





え、それだけ……?





マジか…

不法侵入その二。
…まさかMZDへのまたねが本当にまたねになってしまうとは。





「…はぁ。……困ったものです(某超能力者風に)
あの、とにかくさん、寝てください。熱、あったってマスターが言ってたから」
「あ、もういいよ」





結構楽になったし、アレ使えるでしょ。





空間の再構成」を使って、だるさを取る。
張っていた筋肉がすこし緩んで、一気に脱力。

腕をぐるぐると回し、小さく体の点検。





「…うし。じゃ、もう大丈夫だから、」
駄目です!
うえええ!?

ベッド(多分これ翔太さんの)から下りようとしたら、
カイトが目の前で通せんぼしてきた。

はっきり言って萌える。(最悪)





どんなに治ってもさんはまだ病み上がりですっ!
今日はゆっくりしててくださいっ


その後、マスタ−に怒られます!と付けたすカイト。
お前、そっちが本音だろ。
……そして怒られる=お仕置き=アッー!と考えた私を許せ。





「えー……でもカイト、家事できないでしょうが」
「できますっ!テレビを見て覚えました!」
このテレビっ子め





……とまあツッコミしてみたが、カイト引き下がりそうに無い……。
しょうがなく、私が折れた。
根元の湿る髪を耳にかける。





「…じゃあ、何か聞きたい事あったら、聞いて」
「はいっ!」

使命を任された犬の如く尻尾を振r……じゃねえや、嬉しがるカイト。
一瞬ラブコメにありがちな死亡フラグ(お料理篇)を想定したけど
カイトを信じることにした。





……あ。





「あのさ、カイト」
はい?

部屋からるんるんと花でも飛ばす勢いで出て行こうとしたカイトを呼び止める。
てめぇ……可愛くなったな……。
……彼氏が出来た……?……あ、いや冗談です。





私って、友達かな





自分でも聞いてて突拍子無いなーと思ってたけど。

『友達だし』

あのMZDの言葉を聞いたから、なんか無償にそう問い掛けたくなった。

カイトはきょとんとして、私を見遣る。
私は黙って返事を待ってみる。





やがてカイトは、青空の下咲き誇る花の如く、ふわりと笑った。
……お?










さんは、俺をマスターにあわせてくれた人で、
大切で、恩人で、





友達です






あっ、勿論マスターも友達ですよ!











そう言われて、私はぐじゅる、と顔を崩した。
笑うべきか、照れるべきか。
迷ってそんな風に顔を崩した。

やべえ、と思い俯く。

カイトの軽やかな笑い声が聞こえた。





さんも、結構可愛いところがあるんですねぇー





……悪かったな可愛くなくて。
別にいいけど。

































2009.7.24