(彼女行き着けのおでん屋台にて)





「クリスマスなんて地球どころからこの世界から滅亡しろ」
さん、今僕がクリスマスの話をしてるんですけど分かってますか」
「同僚の台詞。
『やだぁ、クリスマスデートなのに〜、仕事間に合わない〜(笑)』
……お前なんか書類に埋もれて窒息死しろ」
「そこまで言いますかアンタ!」
「独り身にとってカップルなんて全て敵。むしろ恋人何それ美味しいのだったらコンビニ行って買ってこいやァァァァァ!!……あ、おっちゃん、大根頂戴」
「あいよ」
「新八くんも食べれば?どうせ今年も独りなんでしょ」
「どうせってなんだァァァァァァ!」





(五分後、結局おでんを食う)





「でさ、新八くん、何しにきたん?わざわざ探しにきちゃって。
おでん食いに来たわけじゃないでしょ」
「さっきからそれを話そうとしてるのに、さんが遮るから本題に入れないんです」
「あ、そうなの?」
「……もう、クリスマス、万事屋に来ませんかって言ってるんです」
「え、何ゆえ」
「別に、クリスマスに神楽ちゃんが浮かれてて、その時さんの名前が挙がって、僕が使いっぱしりに出されただけですよ」
「ふぅん」
「坊主苦労してんなぁ、ほらよ、おまけ」
「あ、どうも」
「でもアタシ、恋人もいないのに子持ちでクリスマス過ごしたくないなぁ。……ん?この方式で行くと銀ちゃんがお父さん?んで私がお母さん?若いのに子沢山すぎない?いくつの時の子?ねぇ新八くん、どう思うよ」
「知らねーよ!袖引っ張らないで下さい!」
「まぁでもそういうことでクリスマスワーキャーやるのは却下ね」
「今の話のどういう経緯でそうなりましたか!?」





(帰り道にて)





「あークリスマスのライトアップうぜー。クリスマス商戦うぜー。サンタとかいう不法侵入者待ってるガキうぜー」
「いや最後のアンタに関係無いでしょ!?子供の夢壊すなよ!」
「いや、アタシもさ、ちっちゃい頃、何も知らずに不審者を待ちわびていたかと思うとさ。こう……鳥肌が立つよね」
「……素直に恥ずかしいって言ってください」
「ハァ!?ぜんっぜん恥ずかしく無いし!大体いっつも風呂上りは裸で部屋を歩き回るくらいなんだけど!」
「いやそこは恥じらえェェェェェェ!!!!」
「……」
「……」
「……」
「……」
「……」
「……」
「……新八くんは、寂しくないの。独りでクリスマス」
「別に、前までは姉上と一緒だったし、今は銀さんたちがいるから」
「出たねシスコン」
「否定しません」
「つまんねえの……。……はぁ、今はシスコンな新八くんも、いつかは彼女が出来て、彼女のプレゼント買うために馬車馬のように働いたりするのかねえ……」
「人が彼女に貢ぐみたいな言い方しないで下さい。……大体僕は今、好きな人がいるんです」
「……へぇ!?」
「……その顔なんですか」
「いやあ、えへへへ、相手は誰かなあと思ってさ。相手わかったら思う存分新八くんの邪魔ができると思って、ワクワクしちゃって」
「アンタどんだけ底意地が悪いんだよ!」
「だからカップルは皆敵だっつってんでしょ。……あ、お通ちゃんか。でもねえ新八くん、どんなに君があの子を好きでも、あの子国民的アイドルよ?月とスッポンどころか、月と眼鏡よ?」
「例えがよく分かりませんよ……お通ちゃんじゃないし」
「あり?前仕事で会ったとか言ってなかったっけ……?」
「そうだけど、違います」
「なーんだ」
「……その人、馬鹿なんですよ」
「え、酷くない?好きな子に対してそれは酷くない?」
「言ってる事支離滅裂だし……根っこは悪くないけど」
「……新八くん新八くん」
「何ですか」
「アタシ、君が例えホモであっても、これからもちゃんと付き合っていくから。うん。ね!」
「いや何の話ィィィィィ!?僕はホモじゃないですよ!?」
「え、だって今の銀ちゃんにそっくり当てはまるじゃないの。そのままじゃないの」
「僕にそういう趣味はありませんよ!ていうか銀さんはただの憧れです!」
「憧れが恋に変わるっていうのもいいよね」
「話を聞けェェェェェェ!!!終いにゃ殴りますよ!」
「じょ、冗談に決まってんじゃん……そんなに怒んないでよ」
「ああ、もう!何で僕の周りのヤツらはふざけた人ばっかりなんでしょうね!」
「アタシもカウントしてる?」
「この状況でカウントしてないと思うならもう一度空気を読むというスキルを習得しなおしたほうがいいと思いますけどね」
「うわっ、辛辣ぅ」
「……僕の好きな人は、当たり前ですけど、女性です」
「女の子って言わない辺り年上?」
「ええ、まあ」
「ほー……え、何、やっぱり告白しようとか考えてる?」
「別に……ていうか多分その人、僕のことなんか恋愛対象に入れてませんよ」
「あー年上だもんねえ。眼鏡としてしか認識されないのは辛いよねえ」
「……」
「……アレ?ツッコんでこない。どしたの?……え、まさか、眼鏡に傷ついた?え、ごめん、いつも立ち直り結構早いから言ってもいいと思ってたんだけど、アレ?え、あー……ごめんね?ね?」
「……馬鹿じゃないですか、アンタ」
「えっ……そんな飽きられた風に言われると、ギザギザハートの私も傷付くんだけど」
「……僕、決めました」
「あ、決めたの?良かったねぇ。……何を?」
「今年のクリスマスまでに彼女を作ります」
「えええええええええ!?ちょっ、君、人の話聞いてた?私の敵カップルなんだって、」
さんの話なんか知りません。僕は彼女を作って、独り身のさんを嘲笑うという目標をさっきつくったんです」
「ちょ、ただ眼鏡といっただけなのに、そんな仕打ち!?鬼畜すぎる!」
「僕はそれがコンプレックスなんです。それを突付いたさんはもうなんでもありません。僕の半径3メートルに入らないで下さい」
「ちょ、そんなストーカーみたいな範囲指定されんのヤダ!ごめん、ね!ごめん、このとおりだからさ!」
「もう眼鏡を馬鹿にしませんか」
「しない!絶対しない!眼鏡カコイイ!眼鏡素敵!眼鏡最高!」
「いや、眼鏡だけ異常に持ち上げられても困るんですけど……まぁいいや」
「あ、え、許した?」
「次言ったら絶交ですからね」
「ヤダ!絶交ヤダー!ただでさえ狭く浅い交友関係がもっと狭まるー!」
「はいはい」





「あ、新八くん。アタシもうここでいいや。送ってくれてありがと。君みたいなのでも身代わりになることを実感したよ」
「最後の一文を省けば最高にいい言葉なのに……」
「まぁでもクリスマスは無理だけどさ。正月はそっち遊びにいくよ。一緒に紅白とか見たいし」
「あ、はい」
「じゃあね」
「あ、さん」
「ん?何?」
「最後に、一つ」
「ハイ?」
「……多分さん、今年は彼氏が出来ますよ」
「は?何アンタ、慰め?慰めならアタシャいらないよ」
「違いますよ。多分さんを全力で落とそうとしてくれる人が現われる筈です。だからそこでコロッと落ちればクリスマスは独りじゃないですよ」
「アタシそんな尻軽じゃない……けど、それ本当?駅前の胡散臭い占い師に聞いた結果とかじゃないよね?」
「まあ」
「……ふーん。せいぜい楽しみにしてるね。まぁ君もがんばりたまえよ」
「カップルは嫌いなんじゃないですか」
「私に恋人できるんだったら別にいーや」
「そうですか。……ではさん、またクリスマスに」
「はいはい、またクリスマスに………………………………………………アレ?」





予想外の予定が入りました。
(……アレ?)