小さい頃の私は、倉庫には何かお宝が眠っているとどこかで信じていた。
奥の見えない倉庫は、何だかキラキラしているような気がして、時々暇を持て余しては忍び込んだ。
勿論、大きくなった今ではそんなことはないけれど、だけどふと、思い出す。
「何だこの箱……うわっ、使ってない食器類か……もったいなっ、持ってって自分のにしよっかな」
――夏休み。私は、亡くなったおばあちゃんの家にきていた。
そして現在、例の倉庫の掃除中だ。
おばあちゃんは、去年の冬亡くなった。私はおばあちゃんっ子だったので、今でもこうして、おばあちゃんがいたこの家を訪ねる。
今年はこれで三度目。部活の合宿が翌日にあるので、学校に直行できるよう、部活の用意を持ってきた。
耳にイヤホン型ラジオをはめこんだまま、辺りを見回す。こめかみのあたりに溜まっていた汗が、頬へと落ちる。
埃のつもった倉庫は、幼い頃より狭く見える。箱が詰まれ、ペンキの入った缶から、匂いがする。
倉庫の横の壁からは、小さく光が漏れている。
小さい頃、忍び込んだときと、あまり変わっていない。
『――またもや――が――』
ぼうっと回顧に浸っていた私を、ラジオの音声が引き戻す。
頬をはたいて、作業を再開する。
いくつか箱を移動させ、自分の基準で整理をする。何かの住所録や、分厚い辞書、アルバムは縁へ寄せる。
花瓶や陶器の人形は、一箇所に集める。
整理も終盤に差し掛かり――しかしその中で、置き場に困るのが、一番大きな木の箱だった。
「……」
まじまじと見つめ、表面を指でなぞる。さらさらしていた。
もしや桐だろうか。いや、それは無いか?
「……でっけ」
ヘタしたら、赤ちゃん四人とか入りそうな大きさだ。しかも重くて、持ち上げるのは断念し、手で押した。
先ほどまで運んでいた箱も、ここまで重くはなかった。まぁ、中身がタオルだったり、工具だったりするのもあるが。
何をいれているのだろう。おばあちゃんが好きだった着物?しかし、これはちょっと重過ぎる。
……まさか人とか入ってないだろうな、と一瞬馬鹿な考えがよぎる。しかし、そう言われてもおかしくない重さ。
――小さな私の、宝捜しの記憶が、芽を出す。
いやいや、と私は頭を振った。
「……ミイラとか出てきませんように」
手を合わせ、神様に祈ってから、木の箱の蓋に手をかけた。
蓋は少し重く、しかし力をいれれば、がたりと音がした。
……異臭とかは、無い。
そう思い、私は蓋を斜めにずらした。
「……は?」
私はわが目を疑った。
そこには、一体のロボットが、膝を抱え込むようにして入れられていた。