「……」
「……」





その後、ハンドパーツ?とやらに替えたらしいクラッシュマンと私は、相変わらず見詰め合っていた。
最初こそ視線にびくびくしていたものの、今はもう呆れすら感じる。

何がおもしろいんだろう。籠の中のオウムじゃあるまいし、芸すらできないけど。
人間が珍しいとか?……いやいや、そしたらワイリーはどうなるのさ。





「……、……」
「……」





さっきから、あの、と言いかけて口を噤むのを五回くらいしている。
こんなに短い単語がすぐいえないのは始めてだ。友達と喧嘩したって、「ごめん」くらいすぐ出るのに。

もどかしくなって、私は身を乗り出す勢いで、というか実際乗り出して叫んだ。「あの!」

クラッシュマンは少し首を傾げる。





「何だ?」
「……何か用ですか。正直、あんま見られてると……その、怖い」
「見なければいいのか?」
「いや、あの……見ててもいい、いやいいのかな……、じゃなくて。
いるんだったら、何か話とかしたほうがいいんじゃないかなーと」





何で私は中途半端に敬語なのだろう。スネークにもシャドーにもタメなのに。





「……何を話せばいいんだ」
「いや、そんな義務的に言われても……うーん……なんかおかしい……」
「……何でそんなに悩む?」





クラッシュマンは、本当に理解不能、といった様子だった。
なんだか、スネークとか、シャドーとか……あとはまぁ、あのメタルマンとかに比べてとっつきにくい。
突付くのも、触るのも、殴ろうとするのも、躊躇うような感覚。
きっと回りにそういうタイプの友達がいなかった所為だと思う。

首を捻りつづける私に、クラッシュマンは「何が聞きたい」と彼なりに話題を振ってきた。





「差し支えの無い事なら答える」
「……うーん」





そうだなあ。

突然の振りだったので、質問のお便りとかは溜まっていない。
無い頭を絞りに絞って、無難そうな質問を抽出してみた。




「……ワイリー……博士って、どんな人?」
「努力家。天才で、心優しい」
「……盲目的な賛歌をどうも」





ちょっと予想してたけどね。





正直どこまでが事実でどこまでが虚構か判断しかねる。ワイリーの作ったロボットは、基本的に作り手を好きになるように設計されているんだろうか。その割には、自己的な感情が剥き出しだけど。

「あんたら……ロボットは、皆ワイリー博士が好きなの?」

そう問い掛けると、クラッシュマンは少しだけ視線を落とした。
なにかを考えているようだ。

……なんていうか、そうだ、とか即答すると思ったのに、拍子抜け。





「分からない」
「……はいぃ?」
「表面上反発的になるものもいるし、どこまで本気で付き従っているか分からないものもいる。
任務を放り出してどこかにいってしまうものも、時々いる」
「……」
「だが俺は博士が好きだ」





率直に言われ、私が言われたわけでもないのに照れかける。「あっそ、」と空気をかき混ぜて誤魔化す。
話を誤魔化そうと思い、私は次の質問をする。

「ここって、ヒューマノイドタイプのロボットしかいないの?」
「いや、他にもいる。動物を模したものなんかがそうだ」
「……動物」

私の頭の中で真っ先に浮かんだのが、猫。何故なら猫が好きだから。しかし、この基地でそれはないか、と考えを改める。
……オオカミとか、ライオンとか?……いやいや、強そうなの列挙してどうする。

あれこれ考える私に、クラッシュマンが声をかける。





「……今度、一体つれてきてもいい」
「え?」
「ロボット。ヒューマノイド型じゃないロボットを、一体」
「……いいの?」





驚いて、確認をする。
……まぁ、その「いいの?」の裏には、「もし私が天才科学者(ありえないけど)でロボットを改造したりしたらどうするの?」の意も含まれている。だってまだ身元不明な筈だし。

しかしクラッシュマンはあっさりと頷いた。

なんだか、淡白なのか、それとも馬鹿なのか。
と茫然としていたら、





「お前が抵抗した場合は、殺せばいい」





と物騒な仮定条件をつけられた。
思わず、「一般女子高生がロボットに抵抗できねーよ!」と叫んだ。