朝、夢見が悪くて簡易ベッドから落ちた。
痛みで目を覚ますと、鉄格子の向こうにクラッシュマンが待機していて驚いた。
……危うく永眠しかけるところだった。





クラッシュマンの肩には、赤っぽい鳥……のロボット?が乗っかっている。
実際の鳥よりは多分大きいと思うけど、クラッシュマンと比較すると小さく見える。





「……ええ、と。おはよう」
「おはよう」





おはようが似合わない無表情だな、と思いつつも、髪の毛を軽く指で直す。それから、少しぺったりとした感触に、顔をしかめた。
……いい加減お風呂に入りたいです。だってもうお風呂入らず三日なんですけど。さすがに我慢できない。おうちかえりたい。

ぽけー、と思考をお外に飛ばしてから、クラッシュマンの肩を見遣る。多分あれが、昨日言ってた動物のロボットなのだろう。今度っていうか即連れてくる辺りに、コイツの性格が透けて見える。

「それが昨日言ってたヤツ?」
「ああ。ピピだ」





クラッシュマンが指にロボット基ピピを乗せ、私の方に差し出す。……が、鉄格子の向こうまではこなかった。というか、通れないな、これ。





「ぐぬう……」
「……」





大人しく待っているクラッシュマンとピピ、鉄格子から頑張って手を伸ばしている私。なんとも滑稽な図だ。どうにか伸ばせる範囲まで手を伸ばすと、ピピが手の甲に乗った。ちょっとドキドキした。





「なんていうか……そんなに重くない。何世代か前の携帯くらいかなあ」
「飛行するから、多少は軽い」





もっと軽いのもいるが、という呟きに、ふうん、と生返事をする私。正直今は、ピピにしか目がいかない。
ピピは……なんというか、動きは鳥っぽくないんだけど、かといってロボットくさくもない。
こちらをくりくりした目で見てくるから、なんとなく、キュン。

ピピが軽く空中を飛んでみせる。おお、と思わず声が出てしまった。
くるっと回って、今度は私の掌に納まる。大きな卵みたいだ。

機械として動いているせいか、その体は微かに温かい。
思わず、頬がむず痒くなる。





「くあー……可愛い。ぎゅってしたい。むしろ欲しい」
「駄目だ」





独り言に即答された。
えー、と思ってクラッシュマンを見たら目がマジだったので黙った。
どういう意味で駄目なんだ。





「せめてもうちょい……私も肩とかに乗せたい」





ううー、と思って足をじたばたしていたら、クラッシュマンの背後から誰か来たことに気が付いた。
シャドーマンだ。





「おお、殿。おはようでござる……何を?」
「や、このピピっていうロボットともうちょい遊びたいのに、この子鉄格子が通れないんだ」





ねー、と同意を求める。ピピも答えるように、羽をパタパタ。





シャドーマンは顎に手を当てて少し考えると、すぐに自分の武器(シャドーブレードだっけか)を出した。……あれ?

固まる私をよそに、シャドーマンはにっこりと笑った。





「では拙者が通り口を!」





そう言った途端、鉄格子の一部分がなくなっていた。――丁度、人一人が通り抜けられるくらいに。





沈黙と気まずさが空気を割拠し、私も停止する。





鉄格子の残骸は棒切れとなり、床を転がり――こつ、とクラッシュマンの足に当たった。





ぱちん、となにかのスイッチの音がした。