とりあえず、ということで、足の鎖はスネークに外してもらった。
足の開放感に半ば溺れるみたいに、昨日は寝てしまった。





目を開けると、オレンジ色の何かが映った。
ぼんやりとした頭で、眼球を下へと向ける。





鋭い目と目が合った。





「……、……」
「……」





お互い無言で見詰め合う。

しかし、私は正直心臓ばっくばくで、浅い眠りも完全に目が醒めた。
相手は床にしゃがみこむようにして、鉄格子にドリルのようなものを立てかけている。……ドリル?





私は思わずベッドから転がり落ちた。
がん、と鈍い音がして、右手から落下する。

音に反応したのか、シャドーが部屋に入ってきた。





「何ごとでござるか!?」
「、しゃ、シャドー!なんか、なんか死ぬかも!」





ドリルに茫然としている自我が、シャドーの声で引き戻される。私は思わず、端的に状況を告げる。
しかし、そのドリルの持ち主(多分)であろうオレンジのロボットは、変わらず私を凝視している。





……なんだか、檻の向こうの草食動物を見ている気分になった。いや、あのロボットからすれば、私の方が草食動物(獲物)かもしれないが。





シャドーはそのオレンジのロボットを見て、いつのまにか手にもっていた大きな手裏剣を降ろす。
それから、少し疲れたような顔で、そのロボットに問い掛けた。





「クラッシュ殿。……ここで何を?」
「別に。侵入者を見に来ただけだったけど、落ちて、叫ばれた」





私から目線を外さず、淡々と単語で説明する……えーと、クラッシュ?スネークと同じ感じなら、クラッシュマン、か?

なんだか、何も含まないその瞳を見ていると、自然と責められている気持ちになる。
目線を逸らすが、視線が痛い。





殿、殿」
「……何?」
「心配せずとも、クラッシュ殿は攻撃してこないでござる。何、拙者がいる以上、殿に手は出させないが!」
「……」





生ぬるい目でシャドーを一瞥してから、クラッシュ?に目を向ける。
相変わらず、視線はブレない。ちょっと怖い。





「……え、と。です」
「……俺はクラッシュマン」





手を伸ばしたら、がん、とドリルを鉄格子に叩きつけられた。
な、何だ!と思いつつ手を引っ込めたら、クラッシュマンはそのドリルに目を向けた。

「……ハンドパーツに替えるの、忘れてた」
「はい?」
「替えてくる」





クラッシュマンがすっくと立ち上がり、私に背を向ける。
その時やっと気付いたのだが、クラッシュマンはドリルを持っているのではなく、手がドリルだったのだ。





すたすたと淡白に去っていく姿を見て、私はシャドーに漏らした。





「……もしかして、私今、嫌なヤツじゃない?」
「……まぁ、多少」





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