「まさか聖夜にAKUMA退治とはね……」
「まぁまぁ。そのご加護か、いつもより早く終わったさ」
「かなあ……あーあ、せっかく綺麗な夜空なのに、塵が」
残念に思いながら顔を上げる。雪は降っていないが、とても冷たい空気に、白い息が漏れる。
味気ないその光景を見て、ついため息が漏れる。
「さっさとかえろ。あーあ、せっかくパーティーしようと思ったのに」
「なぁ、」
「んー?」
振り返ると、ラビがこちらに向かって何かを投げてきた。
私は反射的にそれをキャッチする。
「何これ……て、ネックレス?」
「そー。メリクリ、」
「あ、そういうことか……ありがと」
でも剥き出しで投げるのはいただけないな、と笑うと、ラッピングしてもらえなかったんさー、とラビが唇を尖らせる。
掌を開くと、きらきらした雪の結晶のモチーフのついたシルバーネックレスがあった。
少し小さめで、線は細い。
暗闇でも、鈍い光を放っている。
「綺麗だね。任務中こんなの買ってたっけ?」
「おう、こっそり買ったんだぜ」
「つけよっと」
とても嬉しかったので、少し声が弾む。
長く伸ばしている髪を前に出し、首の後ろでチェーンを留める。
髪の毛をもどして、どう?と聞いてみる。
「似合ってる。かわいいさー」
「よかった」
くるっと周り、それからちらっとラビを見る。
「ねぇ、ラビも何か欲しい?」
「んー?……そーさなぁ」
「お金は全然使ってないし、何でも買ったげるよ」
「じゃあダイヤ」
「無茶言うな。似合わないし」
そう言ってふざけて、二人で笑う。
私はひとつひとつ提案をする。
「コップとかはどう?本を読むから、ブックカバーかな?マフラー……はもうつけてるしね」
「んー……なんでも良いさー」
「困っちゃうな」
ラビが隣に並んで、私の顔を覗き込む。
「なぁ、手つないでもイイ?」
「手?」
「プレゼントはそれでいいっしょ」
「えぇ?こんなのでいいの?」
「これがいーの」
なんとなく、少し寂しげな声だった。
不思議に思う私に気付かず、ラビは私の手を掴む。
骨ばっていて、少し暖かい。なんとなく、故郷の家族を思い出した。
いつもよりゆっくりしていて、
ワルツみたいに歩みを進めるラビに、私は声をかける。
「ねぇラビ、槌は使わないの?」
「そんなの使ったらすぐ手つなぐの終わっちゃうさー。もちょっと、このまま」
「……はいはい」
少し苦笑して横を見るけど、ラビの表情は窺い知れなかった。
でもどこか、いつもと違う気がした。
手は暖かいけど、少し切ない気持ちになる。
それは、さっき家族のことを思い出したからなのか。
それとも、今このとき、ラビと私しか世界にいないような気がするせいなのか。
分からないまま、私は少し笑って、手に力をこめた。
with best wishes for merry christmas...