「ふあーっ、寒いですねえ」
「クリスマスパーティーしようって言ったのはお前ダロ」
「だってクリスマスまで怪談とか、ないですよ……」
「とっておき、聞かせてやろうか」
「うっいいです!こんな寒いのに、余計寒くなっちゃうよ!」

それより真ちゃんたちが待ってますよ!そう言って先輩をせかす。
先輩は「へいへい、」とやる気なさげに返事をして、後をついてくる。

「うー、さぶ……あっ、先輩、コンビニ!」
「あぁん?」
「あんまん!あんまん買ってきましょー!」

あんまんにひかれたのか、先輩がぴくっと反応する。犬みたい。

「早く行くぞ」
「あっ待って先輩、」











「あったかー……もふもふー」
「……」
「先輩超無言ですね」

先輩はあんまん、私はカレーまんを食べながら歩みを進める。
ふぁっと香るカレーが、食欲を促進させてしまう。困った。

先輩のあんまんもおいしそうだなあ、と思いつつ、隣を歩く先輩を見上げる。





「何ダ?」
「ねぇ先輩、半分あげるからあんまんください!」
「……はぁ」





やれやれ、といった感じで、先輩はあんまんをちぎる。
私もちぎろうとしたが、「いい、ヤメロ」と止められた。味が混ざるから嫌らしい。

先輩からあんまんを受け取って、口に含む。「あ、ち!」
あんが、熱い!





「馬鹿ダロお前」
「うあー痛いーぴりぴりするー」
「我慢我慢、ヒヒヒッ」





先輩は愉快そうに笑いながら歩いていってしまう。
舌を冷気に泳がせながら、もう一度、今度は気をつけて口にあんまんを含む。目じりにたまった涙が冷たい。





「あまー……」
「単細胞」
「あっ、今のかちーんときましたよ」





どーん、といいながら先輩の背中に突進する。
先輩は割とひ弱なので、大きくぐらついて、それから私をねめつける。





「荷物が落ちる」
「先輩が悪いんですよ、人のこと馬鹿にしちゃって」





そんな先輩には何にもあげませんよ、そう言うと、先輩は怪訝そうな顔をする。





「?何かくれんの?」
「ふっふっふ。まぁ、家に着くまで内緒……あっ、雪!」
「ン?……今年初だな」





ふわふわと空から雪が降ってきた。
綺麗だなあ、と思ってみていると、「馬鹿面、早く帰るぞ」を先輩にまた馬鹿にされた。





「もう……はーい」
「あー、寒ィ……」





長身痩躯の先輩は体を丸めるようにしていて、それが猫みたいだった。
ちょっと可愛い、と思いつつ、私はプレゼントであるセーターの存在をいつ明かそうか、わくわくしながら思案するのだった。






(ただいまー!買出し行ってきたよー!)






may this year be happy and fruitful!