ヒーローだってクリスマス商戦に巻き込まれる。
学校帰り、急いで予約受け取り列の最後尾へついた出久は、ふと、目の前に見慣れた制服があることに気がついた。

「あれ?さん…」
「…緑谷?」

偶然にも前に並んでいたのは、少々不良っぽいクールな同級生・だった。勿論出久は話したことがない。

「…ここにいるってことは、クラス会ハブなの」
「あ、うん…ははは」それはさんもなんじゃ、と内心呟く。

「っじゃなくて!もしかしてさんもオールマイトの可動式フィギュア限定カラーを」
「いや、違うけど。…緑谷ってオタクなの?」
「(…BOKETU…!!)」

頭を抱えるデクを見つめて、は不意にぽつりと零した。「緑谷、この後暇だよね」








「私、いずくく、くん好き!」

「はは、緑谷告白されてたし」そういうに、出久は困り笑いを浮かべた。「妹さん、すっごいオールマイト好きなんだね…」

あの年であの知識量…と呟いた出久に、はどこか誇らしげに口元を綻ばせる。
これ妹のプレゼントにすんの、とから聞いたとき、出久は不思議な気持ちになった。彼女の人となりをまったく知らなかったけれど、思ったより気さくで、そんなに怖くはない。

「ありがと、妹に付き合ってくれて。うち共働きで、面倒見なきゃなんだけど…ヒーロー興味ない私だけじゃかわいそうだからさ」
「えっ興味ないの!?」出久が信じられない思いでそう叫ぶと、はケタケタ笑った。

「緑谷っておもしろいなー、家呼んで正解だったかも」

しみじみそう言うに、ちょっぴりどきりとする。

「…なんか、僕も」
「ん?」
さんと、話せてよかった、かも…?」
「…だったら来年も一緒に祝う?」
「エッ」

出久の顔が真っ赤に染まると、は悪戯っぽく笑った。「なーんてね。来年は誰か誘ってくれるといいね」

その言葉に、出久は気づくと「あ、あの、誘っていい!?」と口にしていた。

「…いいの?」
「う、うん…」
「…やった。ありがと」