「…黒いサンタって知ってます?」

炬燵に入って参考書を広げていたはずのが、突然そう呟いた。どうやら早々に勉強に飽きてしまったらしい。
傍らで邪魔をしないよう読書をしていた肋角は、文庫本から顔を上げた。

「悪い子には嫌なプレゼントをあげて、その中でもすんごく悪い子は攫っちゃうらしいですよ」
「…」
「…当てますけど、肋角さん今ナマハゲのこと考えてるでしょ」
「おお、さすがだな。その勘で次の試験も頑張るといい」
「もおお〜真剣に聞いてくださいよ」

ふてくされるに、肋角は呆れたように笑いながら読みかけの本に栞紐を挟む。「突然どうした」

「私、まあまあ大きいので、サンタさんからプレゼントは見込めないんですよ…」
「まあ、そうだな」

それで、と肋角は続きを促す。はじっと言葉を溜めると、「…端的に言うんですけど、年明けのテストでいい点数取ったら、ご褒美ください!」と言いながら頭を下げた。

「…?」
「ていうか肋角さんください!」
「そもそも、もうその頃にはクリスマスが終わってるな」
「…駄目かあ〜っ!!」

冷静な肋角の指摘に、は派手にラグの上へ突っ伏した。肋角がくつくつと喉を鳴らす。「もうじゃあサンタでいいから来てほしい…ぷれぜんと…」脱力しきって仰向けになるの顔を、肋角は上から覗き込んだ。

「さ、もうそろそろ勉強しなさい」
「うええ…もうやだあ…」折角イブなのに、とが呻く。

「君が予定を入れなかったのが悪いんだろう」
「だって、肋角さん来るっていうから」
「…」

その言葉に、肋角は唇だけを歪めて笑った。
それからおもむろに、共寝するようにの横へ転がる。肘をついて己を見下ろす肋角を、は狐につままれたような顔で見つめた。

「…肋角さんが、」
「ん?」
「珍しく、お行儀悪いんですね」
「…君は“悪い子”で、俺は鬼だからなあ」

肋角は子守唄でも歌うようにそう言葉を連ねる。

「サンタじゃなく、俺じゃ不満か」
「…いいえ」