私は、自他共に認める能天気だと思う。





「……ど、も」
「……」





……一週間もせずに前回の出来事を忘れていたからである。
……誰だよ、CDショップには当然行かないなんて言ってたやつぁ。











……お馬鹿丸出しの私は(こう言うと可愛いが要するに単に馬鹿)
デジャヴを覚えつつ、停止中である。





なぜか、あの日(羞恥心に苛まれたあの日)と同じ状況にいる私。






開店すぐのCDショップに入る。
流行のJ-POPコーナーに行く。





……そしてあのでっかい人(横じゃなくて縦に)に会う。





記憶の端の羞恥心から、私の顔が熱くなっていった。
彼はじっと私を見つめている。





……ごくり(口が渇いていたからであって女子高生の生足を見たとかそんなんではない)。





「……ど、も」
「……」





……そして冒頭に戻る。











……私は、かくっと首を下げて挨拶し、くるりと方向転換した。

「今すぐ逃げたい!」

そう叫ぶ心を抑え、私は羞恥心まみれでその場を去ろうと――





がしり。





「……」
「……」





効果音で言うなら、こんな感じ。

いや私冷静だなって思うけど案外冷静じゃないほら漫画とかアニメとかで事故に遭うシーンが三コマくらいに分けられててなんかそんな感じで何言ってるの私ちょっと何これ、何、何この手、は「あんた、」





わたし は ふりむいた!(あ、ぽけもんやりたい)





「は、」
「何?」

はい、と言い切る前に、何、と言われた。





私は羞恥心により涙腺が崩壊するのを防ぎながら小さく、裏返った声で返した。
頭が真っ白で、彼の顔がゲシュタルト崩壊。





「に、人間れす」





……とりあえず手を振り切って逃亡した。











……「彼には悪いことをした」





逃亡者Aはかく語りき。





まるで、彼が変質者、私は被害者、のような逃げ方だった。
正確にいうと私の方が変質者だ。……彼が被害者で。

公園のベンチでぼうっとしながら、すいませんすいませんと頭を下げるOL風な脳内の私。
脳は元気に活発、羞恥心は溢れ出し、ただ漏れである。

センチメンタルに浸ってみる。
五秒で崩壊した。





「人間……人間ねえ……」





羞恥心によって溜まった熱を、吹いた風が奪っていった。





我ながら馬鹿じゃないのか。
いきなり小学生時代のささやかな皮肉が出てくるとは(あの頃は良かった)。

私の言う「人間」は人の聞いている曲を盗み見て、逃亡、羞恥心に苛まれる生物なのか。
心の辞書に登録しておこうかな。……でもそれ世間の一般辞書では「変なヤツ」だよね。





「……ハハッ」





某鼠みたいな嘲笑が出た。





……泣きたい。