ずるっ、と音がして私は滑った。
ごんっ、と音がして私は頭を打った。痛かった。

……でも、今はそれより。





「……にゃんこがいない」





思わず、顔を覆った。











私のポシェットでぷらぷらする、黒猫のストラップ。

中学の修学旅行で、一目惚れして買ったもの。
旅行先とは全然関係が無いストラップだったけど、私は気に入っていた。





青い紐に、黒い体。





使いすぎて、尻尾が取れた。
壁に擦らせてしまって、傷がついた。





――けど、スニーカーと同じ。

使い込むほど、私の心はあの子に向いていって、
愛着が湧いた。





……だから、失くしてしまった悲しみは大きい。
部屋中探しまわったけど、あの子はいなかった。











「……キキじゃないんだから」





しんと静まった部屋で、ぽつんと呟く。

しかも相手はプラスチック。布じゃない。
……粉々だったら修復不可能。ただの黒い塊になってたらどうしよう。





「……探しに、いかなきゃ」





多分、見つからないだろう。





……けど、食材が切れていたこともあって、私はのっそりと起き上がった。