からからと音をたてながら、私はカートを押していた。
……いや。





「……はぁ」





悲しみから全体重をかけて、カートを押していた。











「そう、ですか……」
「申し訳ありません……」
「ああっ、いえいえ!」

申し訳なさそうな顔の店員さんに、慌てて両手を振る。





黒猫(のストラップ)探しはやっぱりというか、難航していた。
心当たりのある場所を鵜の目鷹の目で探して、最終的にはあのCDショップへとたどり着いた。





人が多くて、雑多に音が混じりあう店内。
店員さんに恥を忍んで聞いてみたものの、「落ちていなかったと思う」の一言だった。











「どこ、行っちゃったんかな……」





そう口の中で呟きながら、籠にパスタの袋を放り込む。
ソース何にしようかなー、と考えている間も、頭の端っこでは黒猫の影がちらつく。

「……たらことボンゴレとカルボナーラでいいや」

華やかな三つのソースを引っ掴んで、ひょいひょい、と籠に入れていった。
……正直、三つも必要かどうか分からないが、まぁいいや。

ソースの袋が、ぱたんと倒れて隣のレタスに寄りかかる。





お金もないので、ここらでやめよう。
そう思って、私はレジへと向かった。











レジは少し、というか、かなり混んでいた。
電子音に、軽快な声。
CDショップもこんな感じだったなぁ、とあの喧騒を思い出す。

……そうだ。サービスカウンターに行って、落し物無いか聞いてみよう。
予定をさくさくと立て、台が開いたので籠を置かせてもらう。





その時だった。










「……君、」










何か聞き覚えのある声がして、私は反射的に振り返った。





見えたのは、服の布地。
すぐに目線を、上へ持っていく。










「……あ」










思わず、指を指してしまう。










……あの、背の大きい人がいた。